2017年4月より、要支援者に対する通所介護・訪問介護は「介護予防・日常生活支援総合事業」へと移行した。
この制度改革は、単なる給付の効率化ではなく、高齢者の自立支援と地域共生社会の実現を目的としたものである。
当時は箕面市・茨木市・大東市など、一部の自治体のみが完全移行を達成していたが、2025年を迎える現在、全国的に総合事業の枠組みは定着しつつある。
1. 自立支援と地域包括ケアの深化
2025年以降、地域包括ケアシステムの中心概念は「自助・互助の強化」である。
総合事業の枠組みを通じて、地域住民による支え合いが制度的に位置付けられ、行政がそれを支援する形が一般化している。
特に、ボランティア主体の生活支援、民間企業による介護予防プログラム、社会福祉法人による多機能型デイサービスなど、地域の多様な主体がリハビリテーションを担う構図が形成されつつある。
2. 民間主導によるリハビリテーション市場の拡大
財務省が示していた「要介護2以下の自己負担化」や「生活援助の自己責任化」は、完全な制度移行には至っていないものの、方向性としては明確である。
医療保険・介護保険の給付抑制が続く中で、民間リハビリサービス、フィットネス事業、オンライン健康支援、在宅運動指導などの市場は拡大している。
これにより、リハビリテーションは「保険給付」から「社会インフラ」へと概念が拡張しつつある。
3. 行政の役割変化とリハビリ職種の新たな使命
行政の役割は、直接的なサービス提供から「地域資源のコーディネート」へと移行している。
特に、総合事業の実施に伴い、行政職員にはケアマネジメントやリハビリテーションに関する理解が求められるようになった。
一方で、リハビリ職種は、従来の施設内リハビリにとどまらず、地域住民の健康教育、介護予防教室の運営支援、企業連携による健康づくり事業など、多様な場面で専門性を発揮することが期待されている。
4. 2025年以降の課題と展望
今後の最大の課題は「持続可能な地域包括ケアの構築」である。
財政制約の中で、いかに地域の力を活かしつつ、リハビリテーションの専門性を維持するかが問われる。
また、AIやデジタル技術を活用した遠隔リハビリ、オンライン運動支援、データに基づく健康マネジメントが進むことで、医療・介護・生活支援の境界はますます曖昧になっていくであろう。
総合事業から始まったこの流れは、単なる介護制度改革ではなく、日本社会の「共助と自立」を軸とした新たな社会モデルへの転換である。
リハビリテーション専門職は、その変革の中心に立ち、医療保険・介護保険の枠を超えて、地域の健康づくりと生活支援の担い手となる時代を迎えている。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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