通所介護に潜む「本当に危険な落とし穴」

通所介護の現場で問題が起きると、多くの管理者はこう言う。

「制度は守っているつもりだった」「そんなつもりはなかった」。

しかし、私がこれまでコンサルティングで関わってきた多くの事業所を見てきて断言できるのは、
通所介護のリスクは悪意ではなく、思い込みから生じているという事実である。

落とし穴①

「基準を満たしている=安全」という誤解

定員10名以下の通所介護では、介護職員1名配置で基準を満たす。
看護職員は必須ではない。
この制度解釈自体は、完全に正しい。

しかし、現場ではここで思考が止まってしまう。

私が実地指導や改善支援で関わったケースの多くは、
基準は満たしているが、実態が基準を超えている状態だった。

  • バイタル測定を日常的に実施する

  • 体調変化への判断・助言が必要な利用者が多い

  • 医療的リスクの高い利用者を受け入れている

にもかかわらず、

  • 看護職配置なし

  • 医療連携の契約なし

  • 緊急時の指示系統が曖昧

この状態は、制度上「違反」ではないが、行政から見れば「体制不備」と判断される。

落とし穴は、
「何人配置しているか」ではなく、
「その体制で何をしているか」にある。

落とし穴②

管理者・生活相談員を「人手」として扱ってしまうこと

通所介護では、人が足りない。

だから管理者や生活相談員が現場に入る。

これは現実として理解できる。

しかし、問題はそこではない。

  • 管理者が日中ほとんど不在

  • 生活相談員の配置日数が実質不足

  • 資格要件を「たぶん大丈夫」で運用している

これらはすべて、
実地指導で必ず確認され、確実に指摘されるポイントである。

私の経験上、
「名義管理者」「名義生活相談員」は、
どの自治体でも極めて厳しく見られる。

管理者は、
現場を回す人ではなく、
制度と運営を守る責任者である。

落とし穴③

「利用者のため」が最大のリスクになる瞬間

善意ほど危険なものはない。

  • 利用者負担を取らない

  • 記録を簡略化する

  • 計画と実施内容がズレている

これらはすべて、
「利用者のため」「忙しいから」という理由で起きている。

しかし、介護報酬は公費であり、
善意は一切免責にならない。

私が関わった中でも、

  • 利用者負担の不適切な免除

  • 不実・不十分な記録

が原因で、返還や厳重指導に発展したケースは少なくない。

落とし穴④

集団指導資料を「お知らせ」で終わらせてしまうこと

集団指導資料は、制度の説明書ではない。

行政が「実際に問題になった事例」を整理した警告文書である。

それを、

  • 読んだだけ

  • 職員に配布しただけ

  • 何も変えない

この状態が、最も危険である。

私が経営者・管理者に必ず伝えていること

通所介護は、もはや「現場の感覚」や「昔ながらの運営」で守れる時代ではない。

これから問われるのは、

  • 制度要件を満たしているか
    ではなく、

  • その体制で何を行っているのかを説明できるか

という一点である。

人が足りない、忙しい、昔からこうしている。

これらは、行政の前では理由にならない。

おわりに

通所介護の落とし穴は、
「知らなかった」ではなく「分かっているつもりだった」場所にある。

コンサルティングの現場で何度も見てきた失敗を、これ以上繰り返さないために。

今一度、自事業所の「体制」と「実態」を、冷静に見直す必要がある。介護報酬改定に関して理解を深めたい方はこちらから → 記事を読む

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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