ケアプラン有料化と新サービス類型創設 ― なぜ議論はここまで割れるのか ―

介護保険制度を巡る議論の中で、再び大きな焦点となっているのが「ケアプラン有料化」と、それと並行して示された住宅型有料老人ホーム入居者を対象とする新たなサービス類型の創設である。

厚生労働省は、居宅介護支援そのものへの利用者負担導入は行わない姿勢を明確にしつつ、住宅型有料老人ホーム入居者に限定した形で、ケアプラン作成や生活相談を担う新サービスを設け、原則1割の利用者負担を求める案を提示した。

この制度案は、2027年度の制度改正・報酬改定での導入を視野に、現在検討が進められている。

しかし、この提案を巡っては、現場・関係者の間で賛否が大きく分かれている。

賛成派の主張

賛成、あるいは一定の理解を示す立場からは、主に次のような意見が挙げられている。

  • 居宅介護支援全体の有料化を回避し、「在宅の相談支援は原則無料」という介護保険制度の基本構造を維持した点は評価できる

  • 住宅型有料老人ホームにおける囲い込みや、ケアマネジメントの独立性が確保されにくいという長年の課題に、制度的に対応しようとした点に一定の意義がある

  • 介護付き有料老人ホームでは既に利用者負担が存在しており、サービス類型間の制度的不整合を是正しようとする狙いが読み取れる

  • 出来高払いではなく定額報酬とすることで、書類作成中心の業務から、相談支援・調整機能を重視する方向への転換が期待できる

  • ケアマネジャーに加えて生活相談員の配置を求める構想は、重度者や医療ニーズの高い入居者への対応力向上につながる可能性がある

こうした点から、「問題が顕在化している領域に限定して制度介入を行う」という、現実的な折衷案として評価する声も少なくない。

反対派の主張

一方で、反対・慎重論も根強く存在している。

  • 住宅型ホーム入居か在宅かという居住形態の違いのみで、ケアマネジメントが有料・無料に分かれることへの違和感

  • 低所得・低資産であっても、やむを得ず住宅型ホームを選択している高齢者への影響が十分に考慮されていない

  • 居宅介護支援事業所において、有料・無料の利用者が混在することで、事務処理や説明責任が複雑化する可能性

これらの指摘に加え、前提として業界内で長年指摘されてきた課題がある。

それが、介護支援専門員の業務内容・専門性のばらつきである。

高度なアセスメント能力や医療・多職種連携、意思決定支援まで担うケアマネジャーが存在する一方で、給付管理や書類作成に業務が偏り、専門性を十分に発揮できていないケースも現実には少なくない。

このような状況下で、ケアプランの有料化のみが先行すれば、利用者にとっては「誰が担当するか」によって、支払う対価に対する納得感が大きく左右されることになる。

だからこそ、有料化を議論するのであれば、

  • 業務範囲の整理・明確化

  • 能力や役割に応じた評価の仕組み

  • 継続的な育成・質の担保

といった制度設計を同時に進めることが不可欠である。

ケアプラン有料化は、介護支援専門員の専門性を可視化し、その価値を制度としてどう位置づけるのかという議論と切り離して進めるべきではない。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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