医療・介護・リハビリの現場では、管理職に対して「もっと現場を見ろ」「スタッフをまとめろ」「数字に責任を持て」といった要求が日常的に突きつけられている。
確かに管理職の役割は重要であり、現場運営の要であることは間違いない。
しかしながら、管理職の不全の背景には、経営上層部によるマネジメントの欠如という、根本的な問題が存在していることを見落としてはならない。
管理職もまた「管理されるべき存在」である。
ところが、現実には「任せているから」「自分のやり方でやってもらえばいい」と放任されているケースが多い。
これは信頼という名の放置であり、経営者が本来果たすべき育成・支援・評価という役割を放棄していることに他ならない。

管理職は現場と経営の橋渡しをするポジションであり、そのポジションに対して適切な関与やフィードバックがなければ、組織全体の統制が崩れていくのは当然の帰結である。
例えば、施設の方針が曖昧なまま、管理職に「自立支援を推進せよ」「業務改善をせよ」と丸投げするケースがある。
何をもって自立支援なのか、どの指標で業務改善を評価するのかといった具体的な方向性が経営者から示されないままでは、管理職は場当たり的な対応に終始せざるを得ない。
これは管理職の力量以前に、経営者側の設計責任の問題である。
また、経営者が管理職の業務に対して定期的な振り返りや目標設定、リーダーシップ教育の機会を与えず、ただ結果だけを求める体制も見受けられる。
数字が悪ければ叱責し、現場に問題があれば管理職の責任とする。
管理職を育てたいのであれば、まず経営者が「管理職を管理する仕組み」を整備することが求められる。
週次・月次での面談、期待される役割の言語化、成果の可視化、意思決定支援の枠組みなど、管理職を支える経営者としての行動が必要である。
組織はトップダウンでもボトムアップでもなく、信頼と設計に基づく「相互作用」で動いていくものである。
管理職に現場のマネジメントを任せるならば、経営者自身もまた、自らのマネジメントを見直さなければならない。
それが、真に機能する組織をつくる第一歩である。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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