リハビリ科の教育が機能していない組織に共通する5つの欠落

リハビリ科の教育が実装できているかどうかは、現場の質や人材の成長スピードに大きく影響を与える要素である。

教育が形骸化している職場では、スタッフが育たず、結果的に患者への貢献度も低下する。

そこで今回は、筆者がこれまでコンサルティングで多くの医療機関や介護事業所を支援してきた中で明確になった「教育が実装できているかどうか」を見極めるための5つのチェックポイントを紹介する。

第一のチェックポイントは「教育理念の有無」である。

教育は手段ではなく組織の価値観を体現するものであり、教育の目的や姿勢が理念として明文化されているかどうかが問われる。

単なるスキル向上やOJTの実施ではなく、どのような人材を育てたいのか、何のために育てるのかという根本的な考えが明確でなければ、教育活動は定着しない。

第二は「採用・求人活動との一貫性」である。

教育方針と採用戦略が噛み合っている組織は強い。

たとえば、成長意欲の高い人材を育てたいのであれば、求人段階でそのような志向を持った人材にターゲットを絞るべきである。

教育を重視していると掲げながら、即戦力や安定志向の人材ばかりを採用していては、現場と教育の方向性がずれてしまう。

第三は「ロールモデルの明確化」である。教育には模範が必要である。

新入職員や若手職員が誰を目標とするかが曖昧であると、成長の方向性も定まらない。

優れたロールモデルが明確に存在し、その人物の考え方や行動様式が現場に共有されているかどうかが、教育文化を根付かせる上で重要な鍵となる。

第四は「技術マネジメントの仕組み」である。

リハビリの専門職は高度な臨床技術を有する技術職であり、その技術をいかに管理し、組織にとって価値ある資源として活用するかが問われる。

ここで重要になるのがMOT(Management of Technology)の視点である。

技術マネジメントとは、単なる技術の伝承ではなく、組織の目標達成や差別化、持続的成長に技術がどのように貢献するかを経営的視点で捉えるものである。

たとえば、自院ならではのアプローチ技術や評価法が体系的に管理され、それを基盤として研修や教育が組まれているかどうか。

また、現場の技術的知見が収益やブランディングにどのように資するかが分析されているか。

このような観点が技術マネジメントには不可欠である。

技術を現場内だけの価値にとどめず、経営資源として活かすための枠組みがあるかどうかが、教育の質を決定づける。

第五は「人材育成への投資意識」である。

教育には時間とコストがかかる。

会議室を使う、資料を準備する、先輩職員が指導に時間を割く、すべてが組織にとっての投資である。

しかし、これをコストと捉えるのか、未来への投資と捉えるのかで、教育に対する姿勢は大きく変わる。

実践的な研修の導入、外部セミナーへの参加補助、指導者のスキルアップなど、育成に対するリターンを明確にイメージしている組織こそが、長期的な人材確保と現場力の強化に成功している。

以上の5つのチェックポイントは、どれも組織としての成熟度を示す重要な指標である。

リハビリ科における教育が実装できているかどうかは、単に研修をしているかではなく、組織の中に教育の思想と構造が根付いているかどうかで判断すべきである。

教育は個人任せではなく、組織戦略であり、経営課題でもある。

これらの視点を持って現場を見直すことで、教育の再設計が可能となるであろう。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
経営相談・セミナー依頼はお気軽にお問い合わせください。

関連記事