キャリアデザイン研修やリハビリテーション部門のコンサルティングをしていると、次のような質問をよく受ける。
やりたいことが見つからないので困っています。どうしたらいいでしょうか。
うちの職員は将来の目標がなく、漫然と臨床をしています。どのように教育したら良いでしょうか。
目標管理で職員の目標設定が低くて困っています。
つまり、現場の管理職が本当に求めているのは、自ら目標を持って動けるリハビリ職種である。
しかし、今の時代において明確な目標ややりたいことを持っているリハビリ職種は少数派である。
日本は物質的に非常に豊かであり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といった国家資格を持っていれば、職場を選ばなければ就職率はほぼ100%である。
さらに、能力が高くなくても就職できるという、ある意味で市場競争から守られた立場にある。
このような環境で働くリハビリ職種が強い目的意識を持ち続ける方がむしろ稀であると考えるべきだ。
キャリア理論の中でドナルド・スーパーは、キャリアを生涯にわたる役割の積み重ねとして捉えた。
その初期段階では、自己概念の形成が最も重要であり、自分は何者で、何に価値を感じるのかを理解することから始まる。
つまり、多くのリハビリ職種にとってやりたいことや明確な目標は、最初から存在するものではなく、経験を通じて形成されていくものである。
したがって、管理者や教育者が果たすべき役割は、やりたいことを見つけさせることではなく、経験の中で自己概念を育てる環境を整えることである。
やりたいことが見つからない職員への最も効果的なアプローチは、具体的なロールモデルを提示することである。
抽象的な指導ではなく、どのような人物像を目指すのかを明確にする。
たとえば、臨床推論がこのレベルまで到達する、接遇はこの水準を目指す、書類作成はこの基準をクリアする、歩行介助は特定の先輩職員と同等の精度を目指す、リスク管理テストで80点以上を取る、カンファレンスで意見を述べられるようになる、など具体的に示すことが重要である。
こうしたロールモデルの提示によって、職員は自分の目指す方向をイメージでき、行動の基準が生まれる。
目標設定を本人任せにしてしまうのは危険である。
一見、自主性を尊重しているように見えて、実際は教育を放棄している場合が多い。
やりたいことが見つからない職員に対して「目標を立てなさい」と指示しても、何を基準に目標を立てればよいのか分からず、結果的に形式的で低いレベルの目標にとどまってしまう。
組織はまず、どのような方向に成長してほしいかというモデルを示し、そのうえで個人が自分のキャリアを重ねていけるよう支援する必要がある。
教育の出発点は、やりたいことがあるリハビリ職種はマイノリティーであるという認識に立つことである。
そのうえで、ロールモデルを提示し、段階的な成長プロセスを設計し、日々の経験を通じて自己概念を形成できる環境をつくることが求められる。
キャリアは探すものではなく、育てるものである。
管理者や教育者がその視点を持てば、リハビリテーション部門の人材育成は確実に変わっていく。

