今回は大腿骨頸部・転子部骨折の再発を予防するためのバランストレーニングについて述べる。
大腿骨頸部・転子部骨折は高齢者の転倒により頻繁に起こる外傷の一つである。
一度骨折してしまうと自立して生活する能力が著しく低下してしまう可能性が高い。
また、筋力や姿勢制御能力も低下してしまうため、再転倒のリスクは自然と高くなってしまう。
さらに、心理的にも転倒への恐怖心から活動的になることを恐れ、筋力が低下してしまうという悪循環に陥るリスクもある。
そのため、我々が行うリハビリテーションは再転倒を予防するためにはとても重要となってくる。
再転倒を予防するためのリハビリテーションの一つにバランストレーニングがある。
今回は、再転倒を予防するためのリハビリテーション戦略の一つであるバランストレーニングについて、2019年に発表されたシステマティックレビューを参考に述べる。
■バランストレーニングは再転倒を予防するのに有用であるのか?
2019年に発表されたシステマティックレビューでは…
・バランストレーニングは手術後の総合的身体機能評価を有意に向上させた。
・歩行速度、下肢筋力、ADL、生活の質も有意に向上した。
・高頻度でトレーニングすることは、低頻度ですることよりも総合的身体機能の向上につながる。
※高頻度とは週に3回以上
といった結果が出されており、臨床の中で有用であるとは皆様も感じているとは思うが、しっかりとデータとしてもバランストレーニングの有用性はあると言われている。
■どのような内容のバランストレーニングを行うのが良いのか?
今回参考にした文献の中では、比較的臨床でも導入しやすいバランスクッションの上で直立姿勢を保つことや、歩きながら認知機能トレーニング(数字を逆から数えたり、ランダムに掛け算をする)、階段昇降練習、障害コースを歩いたりといったトレーニングが行われていた。
また、基本的なバランストレーニングに加え、エクササイズバンドを使った筋力トレーニングや上肢のリーチ動作を伴う運動も加えて行われていた。
このように参考にした文献の中でも選ばれたバランストレーニングは様々である。
そのため、単純に比較してどれが一番効果的かを判断するのは難しい。
しかし、これらのバランストレーニングには共通している部分がいくつかある。
その部分というのは、
・機能的トレーニングを含むこと(階段昇降練習と座位からの立ち上がり運動が多い)
・運動や負荷に進行性があること(バランストレーニングの難易度、ウェイトベストの追加など)
・バランストレーニングが含まれていること(当然ではあるが、機能的トレーニングだけでも、筋力トレーニングだけでも効果は期待しにくい)
といった部分である。
臨床では、この共通した部分を理解した上で各対象者に合わせたトレーニングを組んでいくことが重要である。
■どのくらいの期間・頻度でトレーニングを行うべきなのか
まず、今回参考にしたレビューの限界点として、トレーニングの頻度、期間や方法がばらばらであることから比較することが難しい。
そのため、どのくらいの期間でトレーニングを行うのが一番いいのかも不明である。
しかし、研究の中でバランストレーニングが行われたリハビリテーション期間は3週間〜6ヶ月であったが、3週間のものは1つの研究だけで残り8個の研究では最低でも2ヶ月の期間で行われていた。
また、最もよく見られたトレーニング頻度は1週間に3回であった。
さらに、高頻度でトレーニングを行うことは低頻度で行うことよりも総合的身体機能の向上に繋がるとされていた(高頻度とは3回以上のことを指す)。
これらを考慮すると最低でも週に3回以上行うことが推奨される。
■まとめ
今回参考にしたレビューの結果から考えると、上記で示したような点に注意しながらトレーニングを行えば、バランストレーニングは非常に再転倒を予防するために有用であることが分かる。
そのため、臨床で大腿骨頸部骨折のリハビリテーションを行う際は筋力トレーニングや機能トレーニングだけでなく、患者の将来的な再発リスクを考慮しバランストレーニングを取り入れていくことも重要であると考える。
堀田一希

・理学療法士
理学療法士免許取得後、通所介護にて利用者支援を行っています。
臨床では多くの患者さんの主訴が”痛み”であり、痛みを改善するために理学療法士としての基礎である解剖学・生理学・運動学を中心に評価・治療を行なっています。
今までの経験を活かして、皆様のお役に立てるように励んで参ります。

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