2026年度診療報酬改定の基本方針は、物価・賃金上昇や人手不足といった社会変化に対応しつつ、2040年を見据えて医療提供体制の機能分化と地域連携を進め、医療DXも活用しながら、質と成果(アウトカム)に着目した評価へ寄せていく、という流れにある。
この方針の中でリハビリ部門に求められる改定の方向性を、現場目線で簡単に言い換えると次の3点に集約される。
1)どの機能(急性期・回復期・外来・在宅)でも、役割に応じたリハが求められ、連携の中で成果を出すことが問われる。
2)リハは「量」だけでなく「質」へ。提供体制やプロセス、そして成果がより重視される。
3)人材制約が前提になるため、ICT・DX・タスクシフト等を含め、持続可能な運用ができるかが評価と経営の両面で重要になる。
ここから導ける「大切なこと」を定義するなら、こうなる。
自院(自部門)が地域の中で提供する価値を、対象(誰に)と成果(何がどう良くなるのか)まで含めて明確化し、それが安定的に選ばれ続ける仕組みに落とし込むこと。
加算の算定や要件への対応はもちろん必要だが、改定の流れが示しているのは、体制・連携・質・成果・役割である。
つまり「制度に合わせる」だけでは足りない。
患者・利用者が増えず、稼働率が上がらなければ、点数の議論以前に収益は伸びない。
外来リハの新規が増えない、在宅依頼が増えない、病棟リハが伸びないという状況では、基本評価の変動がどうであれ、固定費だけが重くなり経営は苦しくなる。
だからこそ、マーケティングが重要になる。
ここで言うマーケティングは、営業やチラシ配布のことではない。
選ばれて自然に患者・依頼が集まる状態を、設計して再現する活動である。
具体的には、以下を一貫してつなげることが中核になる。
・市場調査:地域の患者像、紹介元(医師、病院、ケアマネ、訪看など)の動き、競合の強み
・サービス設計:急性期なら早期介入と退院支援、回復期なら成果の見える化、在宅なら生活課題の解決、クリニックなら導線と継続率
・導線設計:院内導線(医師・看護・MSW等との連携)、地域導線(紹介・逆紹介・退院後)、デジタル導線(ホームページ・SNS・説明資料)
・伝え方の設計:何ができるかではなく、誰の何がどう良くなるかを、事実(実績・体制・成果)で伝える
例えば、臨床の質は高いのにホームページや営業用資料が弱く、強みが伝わらない。逆に、見せ方は立派でも実態が伴わず、期待とのギャップで信頼を落とす。こうした状態は、部分最適であり、マーケティングが機能していないと言える。
2026年度改定のスタンスが求めるのは、役割を明確化し、質と成果を高め、連携と効率化で持続可能に回すことである。
これに応えるには、算定テクニックだけでは足りない。
自分たちの価値を定義し、狙った患者・紹介元から、狙った導線で、継続的に選ばれる仕組みを作ること。
つまりマーケティングこそが、リハビリ部門・在宅・クリニック・病院の生存戦略になる。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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