リハビリテーションの価値
日本にリハビリテーションが根づいてから約50年が経過した。
そして2025年問題が顕在化する今、医療・介護・在宅のあらゆる場面で、リハビリテーションへの期待はこれまで以上に高まっている。
しかし、リハビリテーションを「手足を動かすこと」「歩行やトイレの練習」といった訓練行為だけで捉えていては、その本質を見誤る。
本来、リハビリテーションとは全人間的復権に資するすべての取り組みである。
この定義を踏まえ、あえてマーケティングの視点で考えると、リハビリテーションのカタチは一気に広がる。
マーケティングの大家である フィリップ・コトラー は、製品には10種類の形があると述べている。
製品とは有形財だけでなく、サービス、経験、情報、組織、アイデアなど「価値を提供するものすべて」を含む。
この考え方を当てはめれば、
理学療法・作業療法・言語聴覚療法は「サービス」であると同時に、
自主トレーニング機器、患者会、Webサイト、地域リハビリテーションを推進する組織なども、すべてリハビリテーションに関わる「製品」と言える。
なぜセラピストのキャリアは
行き詰まりやすいのか
現在働いている多くの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、
サービスを提供するための教育を中心に受けてきた。
評価・治療・介入技術を高めることは、専門職として極めて重要である。
しかし一方で、
価値をどう定義するか
どの形で社会に届けるか
技術をどの製品形態に転換するか
といった視点は、ほとんど学ぶ機会がなかったのが実情である。
キャリア理論の観点から見れば、これは「探索」や「拡張」が不足した状態と言える。
技術という縦方向の成長に偏り、横方向への広がりが持てないため、年齢とともに働き方や収入、役割の選択肢が狭まってしまう。
2025年問題は、単なる人手不足の問題ではない。
サービス提供だけに依存したリハビリテーションの構造が限界を迎えていることを示している。
これからのリハビリテーションと
キャリアに必要な視点
今後、リハビリテーションに求められるのは「サービス・ミックス」という発想である。
サービス・ミックスとは、
形のないサービスと、形のある製品・情報・仕組みを組み合わせて価値を生み出すことを指す(図1)。
図1 サービス・ミックス
例えば、
理学療法サービス × Webによる自主トレ情報発信
訪問リハ × 家族向け動画教材
個別介入 × 当事者コミュニティの運営
これらはすべて、サービス・ミックスの実践例である。
サービス・ミックスが成立すると、
顧客満足度が高まり、継続性が生まれ、価格設定の自由度も高くなる。
これは利用者にとっても、セラピストにとっても利益となる。
理学療法・作業療法・言語聴覚療法を一定水準で提供できることは、資格者としての前提条件である。
その次に問われるのは、その技術をどのような形で社会に届けるかである。
2025年問題は脅威ではなく、
リハビリテーションの新しいカタチ、そしてセラピストの新しいキャリアを設計する好機でもある。
サービスの枠を超えたリハビリテーションに、次の一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。
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理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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