2026年度診療報酬改定が近づいている。
私自身、近年はさまざまな団体から声をかけていただき、全国各地で次期診療報酬改定や介護報酬改定をテーマとした講演を行う機会が増えている。
診療報酬・介護報酬改定に関するセミナーは非常に人気が高い。
多くの参加者が集まり、皆が真剣な表情で話を聞いている。
それだけ制度改定への関心が高く、現場や経営に与える影響の大きさを、多くの人が肌で感じているのだろう。
セミナーに参加する理由を尋ねると、
「経営や運営を改善したい」
「事業所の売上や収支構造を立て直したい」
「自部門の今後の方針を検討したい」
といった答えが多く返ってくる。
つまり、参加者の目的は
「診療報酬・介護報酬改定の情報を知ること」そのものではない。
本当の目的は、
経営や運営を具体的に変え、組織を前に進めること
にあると言える。
しかし、ここに大きな落とし穴がある。
私の経験上、
診療報酬・介護報酬改定の情報を得たにもかかわらず、実際に組織改革や運営改善の行動に踏み出す人は、驚くほど少ない。
知識は増えている。
資料も手元にある。
それでも、現場の動きはほとんど変わらない。
この状況を、私は何度も目にしてきた。
経営や運営を安定させるために必要なのは、
「正しい情報の収集」と「適切な組織マネジメント」の両立である。
どちらか一方に偏れば、組織は機能しなくなる。
どれほど制度を理解していても、
どれほど将来予測が正しくても、
それを現場の行動に落とし込めなければ、経営は変わらない。
中国の格言に「知行合一」という言葉がある。
これは、
「知っているだけで実行しないのは、まだ本当の知ではない。知と行が一致してはじめて意味を持つ」
という考え方である。
診療報酬・介護報酬改定も同じだ。
内容を理解しただけで満足し、実践に移さなければ、それは何も知らないのと変わらない。
知行合一は、経営者や管理者にとって極めて重要な示唆を与える。
では、医療機関や介護事業所の「一流」と「二流」の違いはどこにあるのか。
それは、医療職や介護職の技術力や意識の差ではない。
現場スタッフの質が低いから組織が伸びない、という話でもない。
違いはただ一つ、
経営や運営における意思決定のプロセスに、どこまで本気で向き合っているか
である。
二流の経営者や管理者ほど、
年次計画書、部門運営計画、行動目標、スローガンづくりには熱心だ。
しかし、それらを実行に移すための仕組みづくりやプロセス設計には、ほとんど力を注がない。
簡単に言えば、
「計画好きの、実践嫌い」
この状態に陥ると、組織は確実に停滞する。
診療報酬・介護報酬改定の内容を「知る」だけでは、
組織に何のインパクトも与えることはできない。
2026年度診療報酬改定は、
医療・介護のあり方そのものが問われる、大きな転換点になる可能性が高い。
この時代に生き残るのは、
制度を正しく理解し、
それを具体的な行動と組織運営に落とし込める医療機関・介護事業所だけである。
知識を行動に変えられるかどうか。
2026年に向けて、その差はますます大きくなるだろう。
マネジメントの理解を深めたい方はこちらから → 記事を読む
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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