批判合戦は医療・介護の職場を崩壊させる

■ 現場と経営の対立が続く組織は、必ず停滞する

医療・介護の現場では、次のような声が飛び交うことがある。

  • 「うちの院長は現場をわかっていない」

  • 「介護報酬の加算も理解しない経営者はダメだ」

その一方で、経営者もこう言う。

  • 「うちのセラピストは18単位も取れずに怠慢だ」

  • 「A君は現場の腕はいいが、経営の視点がゼロだ」

このような現場 vs 経営の相互批判が日常化している組織は、
間違いなく 三流の医療機関・介護事業所 である。

なぜなら、
現場のサービスは経営なくして成り立たず、経営は現場のサービスなくして成り立たないからだ。

この当たり前の構造を理解しない組織は、必ずどこかで崩れる。

■ ドラッカーから考えると、現場と経営は「対立するもの」ではない

ピーター・ドラッカーは、多くの著作で「専門職の成果」「マネジメントの役割」「組織としての協働」について述べている。

これらの議論を参考にすると、私は次のように考えることができる。

組織は「専門性」と「マネジメント」が適切に統合されたときに、はじめて成果を生む。

医療・介護の現場で言い換えるなら、

  • 現場の臨床専門性(PT/OT/ST/看護)が組織の価値を形づくり、

  • 経営(マネジメント)がその価値を持続可能にする器となる。

という構造である。

ドラッカーは決して医療・介護を直接論じたわけではないが、専門職組織に関する彼の理論から読み解くと、現場と経営は「互いに依存し合う両輪」であり、上下や優劣で語るものではないという考え方が導き出される。

■ 批判し続ける組織は成長しない

かつての日本では、生産性が低くても事業が成立した。

しかし、今の医療・介護の経営環境は全く違う。

  • 報酬の抑制

  • 人材不足

  • 多職種連携・アウトカム評価の強化

  • 在宅医療の複雑化

これらの環境では、現場と経営が協働しなければ生産性は上がらず、組織は存続できない。

批判しても、内情を非難しても、何も変わらない。

批判は仕事の放棄である。

■ 必要なのは、現場と経営をつなぐ人材

現実的には、現場が経営を学ぶことも、経営者が臨床を理解することもハードルが高い。

だからこそ、両方に理解のある人材いわば 架け橋(ブリッジ)人材 が必要である。

一定の臨床技術を有し、かつ経営の言語を理解する人材である。

そのような人材が増えれば、組織の中に無駄な対立は生まれない。

医療・介護が今ほどこういう人材を必要とする時代はない。

■ 最後に

あなたは経営者を批判していないだろうか?

あなたは現場を批判していないだろうか?

批判では何も変わらない。

行動だけが組織を前に進める。

マネジメントの理解を深めたい方はこちらから → 記事を読む

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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