理学療法士・作業療法士の職域はどこまで広がったのか ―9年前の議論から見た現在地と今後の課題―

2016年4月に開催された第1回理学療法士・作業療法士需給分科会では、両士の業務範囲や人材需給の将来像が議論された(図1.2)。

当時は、理学療法士の業務領域の広がりや、新たな市場開拓の必要性が大きなテーマであり、私自身も「理学療法士・作業療法士が自ら市場を創出すべき」と記した。

あれから9年。

果たして、どれほど前進しただろうか。

図1 作業療法士の業務


図2 理学療法士の疾患、障害、領域等からみた関わり

Ⅰ.活動領域の拡大は着実に進展している
理学療法士・作業療法士の活動領域が確実に拡大している点は大きな成果である。

産業保健、特別支援学校、地域包括支援、介護予防といった分野は、かつて一部の先駆者のみが関与していたが、現在では制度面・社会的理解が整い、一定の地位を確立している。

とくに地域リハビリテーションや介護予防事業、通所・訪問領域の発展は顕著である。

地域住民や虚弱高齢者への支援が拡大し、行政や民間との協働も進展している。

また、教育現場や職場における健康支援など、産業・学校保健領域にも裾野が広がっている

かつての「構想」が「実務」として定着しつつある点は、職能発展の象徴である。

Ⅱ.民間セクターの参入と保険外領域の胎動
9年前に課題とされた「公的保険依存の構造」も変化している。

介護予防事業や自費リハビリ施設、オンラインリハビリ、企業向け健康支援など、保険外リハビリサービスが増加している。

さらに、AI・ウェアラブル・デジタルリハビリといった新技術の導入が進み、民間企業によるリハビリ関連ビジネスが台頭している。

その中心にいるのは、現場で課題を感じた理学療法士・作業療法士たちであり、自ら社会課題を解決するフロンティアスピリッツを持つ専門職の姿が浮かび上がっている。

Ⅲ.残された課題――専門性の再定義と経済的基盤の脆弱さ
第一の課題は専門性の再定義である。

活動領域の拡大により、理学療法士・作業療法士の「核となる価値*が曖昧になりつつある。

特に保険外領域では「治療」「予防」「健康支援」の線引きが薄れ、他職種との競合が増加している。

社会における専門的価値を再構築する必要がある。

第二の課題は経済的基盤の脆弱さである。

新分野に挑戦する個人や小規模事業者が増えている一方で、制度的支援や資金調達の仕組みが未整備である。

理学療法士・作業療法士が社会課題に取り組むためには、職能団体・行政・民間の連携強化が不可欠である。

Ⅳ.次の10年――社会変革を担う専門職へ
9年前の「フロンティアスピリッツを持て」という呼びかけは、今も私の主張である。

しかし、2025年の現在、それは「社会を変革する専門職であれ」という段階に進化した。

高齢社会の深化、医療・介護財源の逼迫、DX・AIの進展といった構造変化の中で、理学療法士・作業療法士の価値は再定義されつつある。

今後の10年は、社会課題の解決に専門性で貢献する変革の担い手としての存在意義が問われる時代になる。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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