2026年の診療報酬改定、そして2027年の介護報酬改定に向けて、業界全体が次の大きな変化に備えている。
2025年の改定から半年が経過した今、その影響がじわじわと事業所経営を直撃しているのを実感している。
私のもとにも「事業所の閉鎖を決断した」「買収の打診が増えている」「親会社から売上増を強く求められている」といった相談が寄せられている。
現場の管理者からは「このままの体制では改定後を生き抜けない」という声も多く、緊張感が一段と高まっている。
これからは、看取り支援、認知症ケア、中重度者対応、在宅リハビリテーション、活動・参加への支援などを包括的に展開できる事業所が生き残る時代である。
単一サービスの強化では限界があり、事業所や地域全体での有機的な連携が問われている。
顧客との対話を通じても、「制度が何を評価しようとしているかを掴み、それに先んじて投資や人材配置を行うべきだ」と助言している。
これまで国が用意した「はしご」に依存して参入してきた経営者は少なくない。
しかし、その「はしご」は確実に外されつつある。
制度に依存し続けた経営者は、不意に足場を失い慌てふためくことになる。
だが、冷静に制度の変化を読み解けば、必ず「別のはしご」が存在する。
それを見つけ、誰よりも早く乗り移れる経営者が生き残る。

私はコンサルの場で「そのはしごを探す力こそがマーケティング能力である」と繰り返し強調している。
経営の素人は、目先の利益に追われて未来の利益を設計する時間を失いがちである。
その結果、大きな遺失利益を招く。
例えば、在宅医療の対象者制限や、訪問看護・訪問リハの役割変化はすでに兆候が見え始めている。
実際、訪問看護ステーションの経営者から「従来の延長線上では戦略が成り立たない」という切実な相談を受けている。
診療所やデイサービスも含め、戦略の再構築は避けられない。
厚労省の検討会、専門誌の記事、新聞の小さな報道など、未来を示唆する情報はすでに散らばっている。
問題は、それらを統合し、自社の財務や人材の状況を加味して戦略的に決断できるかどうかである。
情報を持つだけでは不十分で、意思決定を下すリーダーシップこそが経営者に求められる力であると、私は顧客とのやり取りの中で痛感している。
介護保険制度が始まってから四半世紀である。
国の整備目標はほぼ達成され、市場は成熟から淘汰の局面に入った。
国が守るのはあくまで利用者であり、経営者ではない。
したがって、今こそ経営の素人が玄人へと変わるときである。
制度を恨むのではなく、制度を読み解き、次の一手を組み立てる。
これができるかどうかが、2026年診療報酬、2027年介護報酬を生き抜けるかの分岐点になるのである。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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