診療報酬改定や介護報酬改定は、医療機関や介護事業所の経営・運営に大きな影響を与えるものである。
改定内容に応じて、経営方針の見直し、人材育成の方向転換、さらにはマーケティング戦略の修正が求められ、組織としての革新が不可欠となる。
とりわけ、2011年頃に地域包括ケアシステムが打ち出されて以降、改定の様相は大きく変化してきた。
急性期病院の再編、訪問看護ステーションの重度対応への移行、疾患別リハビリテーションの基準強化、老人保健施設における在宅復帰機能の重視、活動や社会参加を中心に据えたリハビリテーション、診療所の組織化など、多様な変革が次々と進んでいる。
これらは経営的な側面だけでなく、現場で働く理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの専門職の価値観や働き方にも大きな影響を及ぼしている。
例えば、回復期リハビリテーション病棟で臨床と学習に熱意を持って取り組んでいた理学療法士が、改定の影響により訪問リハビリテーション部門への異動を命じられるケースを考えてみよう。
このような状況では、多くの場合「防衛機制」と呼ばれる心理的反応が働く。
防衛機制とは、望まない環境に置かれた際に自分を守るための心の働きである。
その結果、外部への怒りの表出や言い訳、責任転嫁といった行動が増えることで、一時的に心理的安定を保とうとする。
しかし、防衛機制が過度に強まれば、身体的な不調や日常生活の活力低下、さらには仕事への意欲喪失にまでつながる可能性がある。
今日のリハビリテーションや看護の現場は、毎年のように環境が変化している。
そのため、求められる仕事内容や必要とされるスキルも大きく揺れ動く。
したがって、今後は変化を肯定的に受け入れ、自らの働き方を柔軟に進化させる力が、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、さらには看護師に求められるのである。

「働き方を肯定的に変える」とは、社会のニーズに合わせて自らの価値観や関心を常に調整し、キャリアを主体的に設計していくことである。
これはビジネスの世界でいえばマーケティング活動に相当する。
医療・介護従事者がキャリアデザインや自己マーケティングを実践できなければ、防衛機制に支配された人生を送ることになりかねない。
すなわち、診療報酬改定や介護報酬改定は「働き方の改定」でもある。
組織も個人もこの認識を持ち、マネジメントを進めることが不可欠である。
日常的に従業員のキャリア形成を支援する取り組みは、結果として報酬改定を乗り越える力につながる。
あなたの会社、そしてあなた自身の「働き方改定」の準備は整っているだろうか。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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