病床削減と在宅リハビリの現実と理想

直近の統計によれば、2023年10月1日時点の病床数は全国で約123万2000床であり、政府の示す「必要病床数119万1000床」を約4万1000床上回っている。

したがって、今後は病床削減の方向性が一層明確となり、病院外での医療や介護の受け皿が社会的に求められることになる。

病床が減少すれば、必然的に在宅で治療や介護を受ける患者像は変容する。

特に「急性期一般入院料1」や「特定機能病院」に代表される高度急性期領域は、依然として病床維持あるいは強化が求められるだろう。

これに対し、「急性期一般入院料5〜7」や「地域一般入院料」を算定する中小規模病院は、病床削減あるいは地域包括ケア病棟や在宅医療への転換が進む可能性が高い。

回復期についても「回復期リハビリテーション病棟Ⅰ」は維持される一方、「Ⅱ・Ⅲ」は縮小の対象となりうる。

この流れを受けて、従来は病院で回復期リハビリテーションを受けていた患者が、今後は在宅で同様の支援を受ける体制へ移行することが想定される。

フランスでは「在宅入院(Hospitalisation a Domicile)」という制度が整備され、病院と同等の治療・看護・リハビリを自宅で受けることが可能となっている。

看護師や理学療法士には開業権が認められており、医師の処方を基に在宅で包括的なサービスを提供している。

こうした仕組みは、日本が目指す在宅移行の参考になるといえる。

しかし、日本で在宅回復期リハビリテーションを実現するには多くの制度的課題が存在する。

第一に「訪問看護ステーションからの訪問リハビリの提供」が将来的に安定するか不透明である。

第二に「訪問リハビリテーション専用ステーションの新設」が停滞している。

第三に「病床削減に伴う病院勤務者の在宅医療シフト」が困難である。

第四に「在宅医療に熟達した医師、看護師、セラピスト、薬剤師、管理栄養士」が圧倒的に不足している。

第五に「地域でのICT導入による情報共有」が未整備である。

第六に「在宅回復期リハビリを担うノウハウや人材」が著しく乏しい。

このような現実を考慮すれば、理想は理解できても即時の実現は難しいといえる。

さらに、各職能団体は独自の立場を主張しており、その影響力は制度改革に少なからぬ制約を与える。

今後の課題は「理想と現実の差をどう埋めるか」であり、政府の政策設計だけでなく、現場の医療・介護従事者、さらには国民が一体となり、在宅医療とリハビリを社会に根付かせるための道筋を共に模索する必要がある。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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