医療・介護職に求められるセルフマーケティング ― マーケティング5.0時代をどう生き抜くか

マーケティングには1.0から5.0までの概念が存在するとされている。

マーケティングの大家であるフィリップ・コトラー氏は、それぞれの段階を以下のように整理している。

マーケティング1.0
企業が製品中心に発想し、できるだけ安価で高品質な製品を提供し、マスメディアを通じて一方的に広告・販売を強化する段階である。

マーケティング2.0
「製品を売ること」から「消費者が何を望んでいるか」へと発想を転換し、消費者の声を重視して双方向のコミュニケーションを図る段階である。

マーケティング3.0
消費者満足の追求に加え、「どのような社会を実現したいか」を念頭に置き、社会課題の解決に取り組む段階である。
企業には理念に基づく行動や社会的責任が求められる。

マーケティング4.0
デジタル化・IT社会の進展を背景に、顧客の自己実現や共感を重視する段階である。
商品やサービスは機能だけでなく、人間らしさやつながりを感じさせる要素を持つことが重要となる。

マーケティング5.0
AIやビッグデータを活用し、社会課題の解決や人間中心の価値創造を高度に実現する段階である。
テクノロジーと人間性を融合させたマーケティングが展開される。

現在、医療・介護業界においてもマーケティング3.0以降の発想が求められている。

日本社会は超高齢化、少子化、財政難、地方の人口減少といった深刻な課題を抱えており、それらに対応するうえで社会的価値を生み出すマーケティング3.0の視点は欠かせない。

また、今後10年から20年の間に看護師、理学療法士、作業療法士などの人材は一部領域で供給過剰に直面すると予測され、自らの存在意義を確立することは極めて重要なテーマである。

加えて、高齢化社会においては、高齢者の尊厳や希望を尊重することも求められるため、顧客の自己実現を支援するマーケティング4.0の実践も不可欠である。

しかし現状、多くの医療・介護従事者はマーケティング1.0と2.0の範囲にとどまってはいないだろうか。

低賃金を受け入れて目的意識なく働き続けることは1.0、目の前の患者のニーズに応えることに専念するのは2.0に相当する。

これらは重要な段階であるが、それだけでは将来の変化に対応できない。

医療・介護職が今後も市場で評価されるためには、マーケティング3.0と4.0を踏まえたセルフマーケティングが必要である。

すなわち、自らを一つの商品と捉え、社会課題の解決や顧客の自己実現に資する存在として評価される仕組みを、自らの手で構築することが求められる。

皆さんは、いまどのマーケティングの段階に立っているだろうか。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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