ユニコーン型
リハビリテーション部門が陥る罠
ユニコーン企業とは、急速に事業が拡大し、短期間で従業員数と売上高を大きく伸ばす企業を指す。
日本では メルカリ や 楽天 などが代表例として挙げられ、革新的で魅力的な企業という印象を持たれやすい。
しかし、急成長と永続性は必ずしも一致しない。
米国の代表的な株価指数である S&P500 構成企業を対象とした複数の長期分析によれば、企業の平均存続期間はこの数十年で急速に短縮している。
1950年代には平均60年前後とされていた企業寿命は、近年では15〜20年程度にまで縮小していることが示されている1)。
この事実は、規模の拡大そのものが企業の永続性を保証するものではないという現実を明確に物語っている。
リハビリテーション部門における
ユニコーン化
この構造は、医療・介護分野、特にリハビリテーション部門にも当てはまる。
現在では、セラピストが50人以上所属するリハビリテーション部門も決して珍しくない。
人的資源が豊富で、提供できるサービスの幅も広く、一見すると安定した理想的な組織に見える。
しかし、その内側では次のような問題が生じていることが多い。
業務内容が硬直化する
人材が育たない
環境変化に適応できない
マニュアル重視で発想が乏しくなる
働く目的を見失う職員が増える
これらは偶発的な問題ではない。急成長・大規模化した組織が必然的に抱える構造的課題である。
正体は「大企業病」である
部門の規模が拡大すると、管理すべき範囲は一気に広がる。
その結果、仕事の進め方、報告の手順、インシデント対応など、あらゆる場面でルールが整備されていく。
これは、組織運営における官僚主義の拡大を意味する。
人数が増えれば、リーダーの価値観や理念だけで組織を動かすことは難しくなる。
コミュニケーションは複雑化し、採用数が増えることで能力や意識のばらつきも大きくなる。
そのような状況では、ルールで人や業務を管理する方が効率的に見える。
しかし、この官僚主義は、働く人の創造性や主体性、やりがいを確実に削いでいく。
これが、いわゆる「大企業病」の本質である。
職人気質との衝突が生む
カオス
リハビリテーション部門をさらに難しくしているのが、従業員の多くが職人気質のセラピストであるという点である。
セラピストは本質的に、
自身の臨床観を大切にする
画一的なルールを嫌う
個別性を重視する
といった特性を持つ。
つまり、官僚主義とは極めて相性が悪い。
その結果、
ルールを守る人と守らない人が生まれ、管理は強化され、現場は疲弊する。
大企業病と職人気質が入り混じるカオスが、ユニコーン型リハビリテーション部門に蔓延することになる。
組織寿命を延ばすために
必要なもの
ユニコーン型に発展したリハビリテーション部門は、「人数が多い=安定」という段階をすでに超えている。
今求められているのは、
ルールと裁量の適切なバランス
職人性を排除するのではなく活かす設計
働く意味や目的の再定義
管理ではなく組織設計としてのマネジメント
である。
急成長の成功体験に依存し続ける限り、組織の寿命は確実に縮んでいく。
ユニコーン型リハビリテーション部門に必要なのは、拡大の先を見据えたマネジメントへの覚悟なのである。
参考文献
EY. How businesses can stand the test of time.
https://www.ey.com/en_us/insights/consulting/how-businesses-can-stand-the-test-of-time?utm_source=chatgpt.com
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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