2025年の医療・介護分野では、重症者への対応力が強く求められるようになってきた。
急性期病棟や回復期リハビリテーション病棟では重症患者の受け入れが進み、療養病床では医療区分の厳格化が進み、訪問看護では特定疾患やターミナル患者への評価が重視されるようになっている。
こうした変化の積み重ねにより、リハビリテーション専門職にも「重症対応の能力」が必須になりつつある。
2000年代前半は「改善が見込める患者」を効率的に評価・改善することが中心であり、疾患別リハビリテーション料の算定日数上限(2006年)や回復期リハビリテーション病棟のP4P導入(2008年)が象徴的であった。
しかし2012年以降の改定では方向性が明確に変わり、重症者・医療依存度の高い利用者の支援が制度の軸になっている。
これは、急性期短期化・在宅医療の拡大・地域包括ケアの成熟など、社会構造の変化が背景にある。
その一方で、回復過程の評価手法は十分に体系化されてきた。
Barthel Index、Katz Index、FIM、Lawton尺度、老研式活動能力指標など、多数のIADL・ADL評価は現場に普及している。
しかし、これらは「回復が見込める患者を評価するための尺度」であり、重症者の状態把握には限界がある。
実際に重症者の評価では、医師・看護師が用いる項目が中心になる。
血液データ、栄養状態、肝・腎機能、水分量、呼吸・循環動態、意識レベル、褥瘡リスク、嚥下状態、排泄パターンなど、多岐にわたり、リハビリ専門職が最も苦手としやすい領域でもある。
養成校や実習では学ぶ機会が限られており、現場でギャップを感じる専門職は多い。
2025年以降は、こうした重症者評価がリハビリテーションの重要な基盤となる。
IADLやADLの改善だけでなく、生命の質(QOL)やターミナルの評価が求められ、呼吸・循環・栄養など全身管理を理解したリハビリメニューが必要になってくる。
特に訪問看護ステーションや療養病床では、急変リスクや医療的管理の視点が欠かせない。
現在の変化を整理すると以下のようになる。

重症者のリハビリでは、バイタルの変化を読み取る力、栄養・水分と活動量の関係理解、呼吸・循環のフィジカルアセスメント、ターミナル期のQOL支援、多職種連携による高度な情報共有が重要になる。
特に在宅医療の現場では、「急変に強いセラピスト」が高く評価されるようになってきた。
まとめると、回復期だけでは専門職としての市場価値が維持できない時代に入っている。
これからは、重症対応ができるPT・OT・STこそ、2025年以降の医療・介護現場で最も求められる存在になる。
在宅・療養・ターミナルを含む、より広く深い領域の理解と技術が、これからのキャリア安定と価値向上の鍵となる。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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