認知症の方のご家族を交えた意思形成支援におけるポイント

「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」で示されている考え方をベースに、重度認知症の方への意思形成支援について整理してみたいと思います。

臨床の中で家族と一緒に意思形成を進める場面では「正直ちょっと難しいな」と感じる方も多いのではないでしょうか?

本ガイドラインでは、意思決定支援を意思形成・意思表出・意思実現の3つに分けて考えることが示されています。

そこで今回は、意思形成支援において私自身が意識しているポイントを5つにまとめました。

  1. 本人を「意思を持つ存在」として扱い続ける
    認知症が一定以上進んだとしても、ご本人が大切にしてきた生活や価値観は失われません。まず大前提として、本人の尊厳を守りつつ、「この方は大切にしてきたこと」について、ご家族と共通理解を得ることが重要です。ここが行なえていないと、支援者間の意見がズレてしまう可能性があります。
  1. 残された能力を引き出し、本人なりの意思を探す
    重度化すると、発語や選択が難しくなります。しかし、表情や動き、安心している時の様子など、意思のかけらは日常の中に残っているかもしれません。ご家族が気づいている小さな変化、昔からの好み、行動パターンなどを共に拾い集めることで、「こういう時に、快を感じやすいのかもしれない」といった気づきが共有できやすくなると考えます。
  1. 家族の不安や葛藤にも目を向ける
    ご家族は支援者ですが、同時に不安や責任を抱えやすい立場でもあります。介護のしんどさや迷いを抱えたままでは、意思形成の話し合いがうまく進まないこともあります。ご家族の気持ちを聞く時間を作ることは、意思形成がスムーズにするために重要と考えます。
  1. ひとりで抱え込まず多職種での共有と検討が必要
    重度認知症の意思形成は、療法士だけで判断するには難しいテーマです。看護師、ケアマネジャー、介護職員など、関わる人の視点を持ち寄ることで「その人らしい選択肢」が見えやすくなることもあります。ご家族にとっても、複数の専門職の声を聞くことで安心感につながりやすい印象を持っています。
  1. 安全とその人らしさのバランスを丁寧に検討する
    よくあるのが「本人はこうしたい」「でも安全面が不安」という状況です。どちらも大切なので、どちらか一方を切り捨てるのではなく、どうすれば両立できるかをチームで考える姿勢が必要です。少し条件を調整するだけで支援が実現できるケースもあります。

意思形成支援は、正解のないテーマで悩むことも多いですが、ご家族とチームで丁寧に積み重ねていくことが重要です。日々の臨床の中で、ぜひ意識してみてください。

(出典:厚生労働省「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン(第2版)」)

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投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。