2026年度診療報酬改定:専従療法士の業務拡大は本当に前進なのか?

 

令和8年度診療報酬改定では、疾患別リハビリテーション料における専従の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が従事できる業務の明確化が打ち出された。

医学管理等や在宅医療、精神科専門療法、患者・家族への指導、介護職員への助言といった周辺業務にも関与できることが示されており、従来より柔軟な運用が認められた形である。

しかし、この改定を手放しで評価するのは早計である。

まず押さえるべきは、単位数に入れられる業務範囲はかなり限定されているという点である。

対象となるのはあくまで特定の業務に限られており、何でも単位数に算入できるわけではない。

医学管理等の一部、在宅医療の一部、精神科専門療法の一部などは単位数に参入できるが、リハビリテーション記録時間、移動時間、介護施設等への助言に係る業務、その他の周辺業務の多くは対象外である。

現場で日常的に生じる業務全体からみれば、拡大の幅は限定的と言わざるを得ない。

また、今回の単位数参入の考えは、専従者の残業が過剰にならないような配慮の側面が強いと感じる。

すなわち、カンファレンスや他の業務に加えて18単位を算定することで残業が常態化するのを防いだ側面が強く、真の職域拡大とは違う要素が強い。

さらに重要なのは、この見直しは単位数が請求できることを意味しないという点である。

20分以上を1単位相当として実施単位数の算出に含められるとしても、それはあくまで実施単位数の考え方における整理であり、個別療法として新たな診療報酬が発生するわけではない。

つまり、療法士が担う業務の幅は少し広がっても、経済的評価は付いていないのである。

真の職域拡大とは、
「個別療法以外の専門的関与が、病院経営上も意味を持つ点数になること」
である。

今回の改定はこの考えには到達できていない。

また、今回の話は専従者に絞った整理であり、リハビリテーション部門全体の業務のあり方を大きく変える内容ではない。

専従の療法士に対して限定的に認めることで、現場の実態に少し歩み寄ったようには見えるが、実際には「そこまで業務拡大しているわけではない」というのが率直な印象である。

そのため、結局のところ何を目的にした見直しなのかが見えにくい

療法士の専門性を広く発揮してほしいのか、人員運用を多少しやすくしたいのか、あるいは現場からの要望に形式的に応えたのか。

どの方向を目指しているのかが曖昧である。

現場としては、解釈を誤って「請求できる業務が増えた」と受け取るのではなく、あくまで専従者の一部業務の位置づけを整理しただけと冷静に捉える必要がある。

今回の改定は前進というより、現場の実情に対する限定的な追認にとどまる内容である。

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筆者

高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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