2026年度診療報酬改定は、急性期・回復期の大きな枠組みに注目が集まりやすい。
一方で、現場の運用を確実に変えるのは、入退院支援、地域連携、算定管理、記録様式に関わる細かな改定である。
ここでは、答申と点数表から読み取れる範囲で、リハ職種が知っておくべき周辺改定を狙い・点数・要件まで含めて整理する。
1)賃金改善の評価は、基本給反映を重視する方向である
各ベースアップ評価料は、賃金改善を一時金中心に偏らせず、賃金改善総額の3分の2以上を基本給等の引上げで反映する考え方が明確化されている。
入院・外来在宅のベースアップ評価料でも同様の扱いである。
狙いは、人材確保を一過性ではなく持続的にすることにある。
リハ部門としては、病院全体の届出方針が固まると、配分や改善方法の説明責任が生じやすい。
管理者は人事・経営と共通理解を作り、リハ職員へも筋の通った説明ができる状態にしておくべきである。
2)障害者施設等入院基本料に廃用症候群の患者が追加される
障害者施設等入院基本料等では、主傷病名が廃用症候群の患者の取り扱いが見直され、対象に追加される。
あわせて、廃用症候群を発症する以前から重度肢体不自由児(者)に該当していた患者は除外と整理されている。
狙いは、障害者病棟の患者像に合わせ、状態に応じた評価へ寄せることにある。
算定要件の文言では、対象患者は廃用症候群であれば何でもよいのではなく、医療区分1や2に相当するものという条件が入っている。
廃用は入院中に進行しやすく、活動量低下、合併症、ADL低下の連鎖が起こる。
リハは、廃用の背景、回復の見込み、介助量、環境調整の論点を言語化し、病棟の説明・記録に落とし込む役割を担うべきである。
3)協力医療機関の情報共有・カンファレンス頻度が具体化される
協力医療機関に求められる情報共有の見直しは、協力対象施設入所者入院加算や往診料の注10に掲げる介護保険施設等連携往診加算に関わる施設基準の整理である。
具体的には、協力対象施設とのカンファレンスを年3回以上実施することが求められ、ビデオ通話機器による実施も可とされた。
一方、一定の往診実績がある場合には、頻度を年1回以上へ緩和できる取り扱いも整理されている。
さらに重要なのは、このカンファレンスが入退院支援加算1の連携機関カンファレンスと兼ねても差し支えないとされている点である。
狙いは、地域連携を形式から実質へ寄せ、急変時対応や連絡方法まで含めて、日常的に共有できる関係を作ることにある。
リハ職種は、退院後の再入院予防に直結する生活情報、すなわち移乗・排泄・更衣・嚥下・福祉用具・転倒予防といった要点を定型化して提示できると、会議体の価値を一段引き上げられる。
4)入退院支援加算が包括系病棟で強化される
入退院支援加算1は、地域包括医療病棟入院料、回復期リハ病棟入院料、地域包括ケア病棟入院料で1,000点(退院時1回)として位置づけられる。
加えて、地域連携診療計画に関する情報提供時に、検査結果や画像情報などを添付して提供した場合の加算(200点)が新設される。
退院困難要因の見直しも行われ、早期抽出や意思決定支援など、現場で頻出する課題が明文化されている。
狙いは、退院の質を上げ、受け手が迷わない情報提供へ寄せることにある。
リハの関係性で言えば、退院支援は看護・MSWだけの仕事ではない。
退院後の生活像を最も具体に描けるのはリハである。
画像・検査情報の添付そのものは医師側の領域であっても、病態の見通しを踏まえた活動計画、介助指導、環境調整へ落とすのはリハの責務である。
5)回復期リハで高次脳機能障害の退院支援が要件化される
回復期リハ病棟では、高次脳機能障害の患者について、支援センターや障害福祉サービス事業所等の情報を把握し、退院時に説明し、必要に応じて対象機関へ患者情報を提供することが要件化される。
狙いは、退院後のサービス利用を途切れさせないことにある。
身体機能が改善しても、遂行機能・注意障害・社会行動面の課題が残りやすいのが高次脳機能障害である。
OT・STを中心に、PTも含めて生活上の困りごとを言語化し、地域へ引き継ぐ体制を病棟ルールとして実装する必要がある。
6)疾患別リハの上限緩和対象が整理され、起点が広がる
疾患別リハの算定単位数上限の緩和(通則第4号)に関し、対象患者(別表第九の三)が見直される。
従来は、入院中で早期歩行やADLの自立等を目的として、心大血管疾患等リハ料Ⅰ、脳血管疾患等リハ料Ⅰ、廃用症候群リハ料Ⅰ、呼吸器リハ料Ⅰに加えて運動器リハ料Ⅰを算定する患者も、上限緩和の対象に含まれていた。
改定ではこのうち運動器リハ料Ⅰが対象から外れる。
その結果、急性期入院で運動器リハを実施している患者は、上限緩和による9単位の扱いが取りにくくなり、実務上は通常上限(6単位)での運用が基本となる。
あわせて、脳血管疾患等の患者に係る期間要件は、起点を発症日だけでなく手術日または急性増悪の日からも数えられるよう整理され、現場の実態に合わせて算定管理がしやすくなる。
ここは、医師記録(発症日・手術日・急性増悪日)とリハ側の算定管理の整合をより強く求める変更である。
7)リンパ浮腫複合的治療料は実施時間で評価される
リンパ浮腫複合的治療料は、重症の場合に60分以上500点、40分以上60分未満350点といった実施時間に応じた評価が整理される。
また、リンパ浮腫指導管理料では、医師の指示に基づき看護師に加えPT・OTが指導を実施できることが明記される。
狙いは、重症例への介入量を適切に評価し、重症化予防とセルフケア支援を後押しすることにある。
リハが関与する施設では、実施時間と内容の記録精度がそのまま算定の安定性になる。
8)産科管理加算の新設は、連携体制を評価する流れである
産科管理加算が新設され、病院250点、有床診療所50点(1日につき)である。
対象は分娩を伴う入院中の患者で、施設基準に適合し届出を行った医療機関が、必要な産科管理を行った場合に算定する。
直接のリハ項目ではないが、産後の身体機能回復、疼痛、育児動作の負担など、周産期でリハが関与する余地は広がっている。
院内連携が評価される流れとして理解しておくべきである。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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