今回の改定は、回復期リハビリテーション病棟には「新たな質の形」が突き付けられたと言える。
回復期の価値を実ADLや生活の質が変わったかで測り直す、という宣言に近い改定である。
まず、改定内容を整理しておく。
- 実績指数の算出ロジックを見直し、「歩行・車椅子」と「トイレ動作」が5点以下から6点以上に改善した場合、FIM運動利得に加点する
- 「効果が十分でない病棟」の判定基準(実績指数の下限など)を、より厳格化する方向で見直す(数値の確定は最終資料待ち)
- 実績指数の除外要件から「80歳以上」を削除する
- 除外要件のうち、FIM運動20点以下は残しつつ、疾患別リハが1日平均6単位超のケースは除外対象にできず、算出に含める
- 除外要件のうち、FIM認知24点以下を14点以下へ厳格化し、除外の範囲を狭める
- 除外できる患者割合の上限(従来30%)を見直し、除外による調整余地を縮小する方向(数値の確定は最終資料待ち)
今回の改定で何が起きるのか。
ひとことで言えば、回復期は「単位数」から「アウトカム」へ、さらに「アウトカムの中身」へ踏み込まれる。
象徴的なのが、歩行・排泄の5→6の加点である。
6点は、臨床現場では意味が違う。
介助が必要な状態から、修正自立へ近づく境界であり、家に帰れるかどうかの確率を大きく変えるラインである。
政策側は、派手な利得よりも「生活が成立する最小限の自立」を確実に越えさせる病棟を評価したいのである。
次に、除外の締め付けが強い。
80歳以上の除外が消える。認
知の除外基準も大きく絞られる。
さらに除外割合の上限まで見直される。
これは明確に、「除外で指数を守る」運用を抑える意図である。
回復期が、重症患者に向き合う場であることが再定義されたと言っても良い。
高齢や認知を理由に計算から外す発想を続ける病棟に対して、制度側は「それでは質を語れない」と言っているに等しい。
加えて、FIM運動が低いケースでも、疾患別リハが1日平均6単位を超えるなら算出に含める、という設計は重要である。
リハを相当量入れているのに、指数から外すことで見えなくなる領域があった。
今回のルールは、その抜け道を塞ぎ、「やっているなら成果も含めて説明せよ」という方向に病棟を押し込む。
そして最後に、実績指数が低い病棟への判定基準が厳格化される。
数値の確定は最終資料待ちだが、方向性は明確である。
回復期に求められるのは「とにかく単位を積むこと」ではなく、「改善が出る設計」へ組織として移行することだ。
これが出来ない病棟は、いずれ制度上の居場所が狭くなる。
では、現場は何を変えるべきか。
指数は結果であり、指数が上がるプロセス、すなわち、リハビリテーション・ケアそのものを再考することである。
第一に、歩行と排泄に関して、5→6を確実に越えるための標準パスを組むことである。
リハビリ室だけで完結させず、病棟ADL、環境調整、福祉用具、看護介入、家族指導まで一体化させる。
第二に、FIM採点の標準化とデータ監視である。
FIM採点のブレがあると信用できないデータとなるため、今一度、採点の標準化を促進する必要がある。
第三に、高齢・認知・BPSD・せん妄を多職種連携を用いたケアを実践していくことである。
回復期リハビリ病棟は、生活が変わったかどうかが問われ、そのための仕組みづくりが問われる。
今回の改定は、病棟の現場力と組織力を同時に試す改定である。ここで変われる病棟が、次の時代の回復期の主役になるのである。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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