2025年現在、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(以下、リハビリ職種)の過剰供給問題は、一時期に比べると小康状態にある。
かつては「増えすぎて雇用先が減少する」と言われた時代もあったが、ここ数年は少子化の影響による養成校の定員割れや志願者減少が進み、供給の勢いはやや落ち着きを見せている。
一方で、医療・介護の現場では依然として採用難が地域や分野によって二極化しており、都市部では飽和、地方では不足というアンバランスな状況が続いている。
とはいえ、長期的に見ればリハビリ職種の雇用構造は依然として課題が多い。
65歳以上の高齢者人口は2042年にピークを迎え、その後は急速に減少すると予測されており、利用者数の母数が減少すれば、リハビリニーズも相対的に減る。
このとき、医療・介護分野の既存事業モデルに依存する働き方では、雇用を維持し続けることが難しくなる可能性が高い。
とはいえ、今後は単純な「リハビリ職の余剰」ではなく、「必要なところに必要な人がいない」構造的ミスマッチが問題となる。
病院・施設の数は減る一方で、地域在住高齢者やフレイル予防のニーズは高まっており、雇用の再配置が求められている。
つまり、今後は「量の調整」ではなく「活躍領域の再設計」がテーマになる。
リハビリ職種が安定して働き続けるためには、従来の医療・介護モデルの枠を越えた新たな活動の場を生み出すことが不可欠である。
近年では、理学療法士協会や作業療法士協会、言語聴覚士協会などからも「地域・産業・教育・行政」などの分野での活動拡大が提唱されている。
しかし、現場の一人のリハビリ職種が新しい市場を自ら開拓することは容易ではない。
マーケティングや事業開発の知識を持たないまま挑戦しても、持続的な成果を出すことは難しい。
では、どのようにすれば「新たな活躍の場」を創ることができるのか。
その鍵となるのが、企業との連携である。
企業は資金力・販促ルート・既存顧客基盤・法務サポートなど、リハビリ職にはない強みを持つ。
そこにリハビリ職種の専門性を組み合わせることで、健康経営・地域予防・教育・福祉機器開発などの新たな領域に参入できる。
実際、近年では以下のような事例が生まれている。
・大手企業が健康経営の一環として理学療法士を社員の健康管理担当に採用
・福祉用具メーカーと作業療法士が協働して新製品を開発
・IT企業と言語聴覚士が連携し、AI発話訓練アプリを開発
・デイサービス企業がリハビリ職監修のオンライン運動プログラムを展開
また、企業と組むことで、法的・社会的な批判への備えができる点も見逃せない。
新しい取り組みを個人で始めた場合、「資格の範囲外では?」という指摘を受けやすいが、企業の中で企画として進めることで、リスクマネジメント体制を整えやすい。
リハビリ職種が企業との接点を持つには、展示会・異業種交流会・ヘルスケア系ビジネスイベントなどに積極的に参加することが有効である。
自らの専門性を社会に接続する場は、臨床現場の外にも確実に存在している。
少子化によって供給が自然に調整される可能性がある一方で、新しい需要を自ら生み出せるかどうかがリハビリ職種の未来を左右する。
10年後、「企業と連携して社会課題を解決するリハビリ職種」が当たり前になる前に、今から一歩を踏み出すことが求められている。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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