2025年11月14日の中医協総会では、多職種連携やリハビリテーションのあり方が中心議題となり、2026年度改定の方向性がより明確になった。
多職種連携の重要性は今さら強調するまでもないが、少子化による医療人材不足、高齢者の複雑化した医療・介護ニーズを考えれば、診療報酬で評価される流れは必然である。
むしろ問題は、制度が「現場が本当に動ける設計になっているか」という点であり、ここに大きな課題が残されていると考える。
■「リハビリ・栄養・口腔」連携体制加算の効果は明白である
本総会でも強調されたように、2024年度改定で再編された「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」は、急性期病棟での高齢者のADL低下抑制に大きく寄与している(図1、図2)。
リハビリ・栄養・口腔の三位一体の介入が、口腔機能の改善 → 栄養状態の改善 → リハビリ効果の最大化という理想的な流れを創出しているのである。
ここに異論はほぼ存在しない。
実際、加算取得の病棟では休日リハの充実、早期介入の徹底など、リハビリ提供そのものの「質」が底上げされている。
図1 リハビリ・栄養・口腔連携体制加算の効果4(中医協総会(2)18 251114)
図2 リハビリ・栄養・口腔連携体制加算の効果6(中医協総会(2)20 251114)
■一方、制度設計には現実を見ていない部分がある
効果は高いにもかかわらず、取得病院が限られている理由は明確である。
- 療法士の専従要件が過剰に厳しい
- 休日リハ提供要件(平日8割以上)が硬直的
- 高齢者を多く受け入れる病棟でも取得できないケースが多い
要件を満たした病院が「優れている」のではなく、要件が現場の人的リソースに対して乖離しているのである。
これは、制度側が「現場のキャパシティを把握していない」典型例といえる。
■診療側の提案は妥当であり、むしろ当然である
診療側委員からは次のような改善案が提出されている。
- 療法士専従要件を「専任」へ緩和
- ADL低下ハイリスク患者に特化した評価
- 歯科受診判断時の上乗せ評価
- 休日リハ要件を緩和し“下位加算”を創設
- 高齢者の多い病棟が取得しやすい基準の再設計
これらは、制度の実効性を上げるためには避けて通れない論点である。
私はコンサルタントとして、特に「下位区分加算の創設」は必須であると考えている。
理由はシンプルである。
「少し頑張れば届く」制度設計にしなければ、全国の病院に普及しない。
診療報酬は「理想」を語る場ではない。
現場が再現できる制度でなければ意味がないのである。
■支払側は質担保を強調するが、それは当然である
支払側委員は、
「効果が高い加算だからこそ、質を担保すべき」
と指摘している。
これは完全に妥当である。
しかし、人的リソースが逼迫する中で、質担保と取得拡大を両立させるためには、要件の質を維持しつつ、現場実装を阻害している過度な部分だけを見直すという精密な制度設計が求められる。
たとえば「退院後の歯科受診率」を要件化する案は、アウトカム志向の観点から興味深い。
単なるプロセス評価から一歩踏み込んだ設計であり、今後の制度の方向性を象徴している。
■急性期病棟は多職種チームが組めて初めて成立する医療へ
今回は、多職種配置の柔軟化や、栄養士・療法士の病棟業務の強化などが論点として挙がった。
現場を知る者として、これは当然の方向性である。
高齢者の急性期治療は、もはや医師・看護師中心のチームでは完結しない。
口腔、栄養、リハビリを含めた多職種が「同じ患者のストーリー」を共有して介入することで初めて、早期回復と在院日数短縮が実現する。
看護側からも「多職種連携なしでは安全な退院支援は成り立たない」と強調されたが、これは現場の実態そのものである。
■まとめ:2026年度改定は多職種連携の質と実装力が問われる改定である
今回の議論から読み取れる最も重要なメッセージは次の一点である。
「多職種連携が実効的に機能する制度を、現場が再現できる形で設計し直す必要がある」
効果の高い加算が取得できない制度になっている状況は、患者にとっても医療機関にとっても損失である。
2026年度改定は、
- 多職種連携の質
- 加算取得のしやすさ
- 現場実装のしやすさ
の三点をどうバランスさせるかが最大の論点となる。
私はコンサルタントとして、制度側の議論に「現場の再現性」という視点がもっと強く持ち込まれるべきだと考えている。
制度が理想を語るだけでは、医療の質は上がらない。
診療報酬改定に関して理解を深めたい方はこちらから → 記事を読む

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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