重症患者の一割が超重傷者
回復期リハビリテーション病棟の議論で、現在特に注目されているのが「重症患者割合(4割)」とアウトカム評価の関係である。
中央社会保険医療協議会 総会(第627回)議事次第(令和7年11月14日、厚生労働省保険局医療課)の資料では、回リハ入院料1・2で“重症患者割合4割以上 が求められる一方、その4割の中の約1割がFIM20点以下の超重度者 であることが示された(図1)。
政策側としては「重症者を受け入れてもアウトカム評価で不利にならない仕組み」のつもりで制度設計を行っている。
しかし現場では、集中的リハが成立しないほど重度な患者が増えてしまっている という声が高まっている。
図1 超重傷者の受け入れが多い実態
FIM20点以下の患者は「集中的リハ」の対象なのか?
重症患者基準(FIM55点以下)のうち、約1割がFIM20点以下 だとされている。
この層はほぼ全ADLが全介助で、合併症管理・栄養・せん妄・褥瘡などの医療管理が中心となり、以下の特徴を持つ。
集中的リハを行ってもFIM利得は小さい傾向
回復期の3時間リハの価値を十分に活かせない
生活期への移行調整の比重が大きい
現場で「改善が狙いにくい層が重症患者割合に含まれてしまっている」という問題意識が出るのは、当然の流れだと言える。
政策の理念と現場の実感のズレ
アウトカム評価導入時、国は以下の理念を掲げていた。
1)患者選別を防ぐ
2)重症者の受け入れを評価する
3)機能改善につながる“適切な重症者”にしっかり介入する
しかし実際には、
理念:改善可能な重症者を受け入れて成果を出す
現場:改善が難しい超重症者まで入棟し、アウトカムを圧迫
というギャップが生じている。
特に回リハ入院料1・2では「重症者4割以上」が病棟運営に強く影響するため、制度の要請が臨床の判断より優先されてしまう構造 が問題となっている。
本質的な問い
FIM20点以下の患者は本当に回復期リハの役割なのか?
FIM20点以下の患者が必要としている支援は、以下の性質が強い。
医療管理(肺炎、栄養、せん妄、褥瘡)
ポジショニング・拘縮予防
摂食嚥下の初期支援
介護負担の評価
生活上のリスク管理
これらは本来、地域包括ケア病棟や老健(介護老人保健施設)の役割領域と非常に親和性が高い。
回復期リハ病棟の強みは、
1)集中的リハ(最大3時間)
2)FIM利得の最大化
3)活動・参加の改善
といった「改善を取りに行く機能」である。
FIM20点以下の患者はこの改善特化型の枠組みに当てはまりにくい層である。
地域包括ケア病棟や老健の役割ではないのか?
今回提示されたデータは、改善が見込みにくい層が回復期に一定割合で流入している という問題を強く示唆している。
しかし、この層はもともと下記の領域との親和性が強い。
地域包括ケア病棟
医療管理の継続
生活移行支援
急性期からの受け皿
老健(介護老人保健施設)
生活リハビリ
家族支援・介護力調整
長期的なADL維持
つまり、制度上は回復期に重症者4割を課しているが、臨床的には地域包括ケア病棟や老健が担うべき層まで回復期が受け入れてしまっている構造的ミスマッチ が起きている。
ここは今回の議論で最も重要な本質論であり、回復期・地域包括・老健の機能整理をもう一度行う必要がある。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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