【1】包括的アセスメントこそマネジメントの出発点
運動器疾患のマネジメントは、疼痛軽減や筋力強化だけでなく、患者の生活背景や社会参加の目標まで視野に入れた多面的なアプローチである。
特に、生活背景を丁寧に確認し、受傷機転につながる要素を分析したうえで助言することは、再発予防に直結する重要な介入である。
変形性膝関節症、腰部脊柱管狭窄症、肩関節疾患など慢性化・再発しやすい症例が増える中、従来の「患部中心」の評価だけでは限界がある(図1)。
疼痛の強度、関節可動域、筋力に加えて、動作時痛のタイミング、代償動作、靴の状態、仕事における反復動作や負荷などを統合的に捉えることが求められるのである。
これらの生活的・職業的要因はしばしば見落とされがちであるが、症状の背景に強く影響していることが多い。
図1 痛みの原因は日常生活動作にある
【2】患者教育とセルフマネジメントが予後を決める
リハビリ職種が介入できる時間は限られているため、患者教育とセルフマネジメントは必須である。
痛みのメカニズムや改善プロセスを理解してもらうことは不安の軽減につながり、自主的なセルフケアを継続する動機となる。
加えて、自主トレーニングの指導は、患者の予後改善だけでなく、リハビリ職種自身が疾患別リハビリの単位枠を超えて価値を発揮する手段でもある。
在宅・通所・外来など、限られた単位数の中では個別対応のみに頼ることは難しく、自主トレ指導は欠かせない(図2)。
患者が自らコンディション管理できる力を身に付けることが、長期的なアウトカムを左右するのである。
図2 リハビリ職種の自主トレ指導は必須である
【3】徒手療法と運動療法のバランス設計
治療アプローチとしては、徒手的介入と運動療法の適切な組み合わせが鍵となる。
疼痛が強い急性期には、関節モビライゼーションや軟部組織リリースなどの徒手療法により可動性や循環の改善を図ることが有効である。
一方で、症状が落ち着いてきた段階では、筋力トレーニング、バランス練習、動作再教育などの運動療法を中心とし、再発予防と機能向上を目指す必要がある。
ただし、近年、ハンズオンの技術を学ぶ機会が減少しており、徒手療法に本格的に取り組むリハビリ職種が少なくなっている点は懸念される。
徒手療法は可動域改善や疼痛軽減に適した技術であり、解剖学的理解と繊細な触察技術を伴う専門性の高い領域である(図3)。
質の高い徒手技術を継承し磨いていくことは、今後の運動器リハビリにおいて重要となる。
図3 徒手療法はリハビリ職種の専門性が発揮できる技術である
【4】患者の生活目標に基づく治療計画が成果を生む
運動器疾患のマネジメントで最も重要なのは、患者自身の生活目標を中心に据える姿勢である。
痛みの軽減は目的ではなく、その後の生活行動を実現するための手段である(図4)。
患者が望む「また歩きたい」「仕事を続けたい」「趣味を再開したい」などの具体的な目標を丁寧に引き出し、それを治療計画に反映させることで、意欲の維持とアウトカム向上につながる。
図4 アウトカムは患者の生活行動である

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略と人材育成に精通し、年間100回以上の講演・研修を行っている。
病院・介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と現場力の向上をサポートしている。
著書には「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」に加え、
『外来リハ・通所リハ・通所介護のリハビリテーション(運動器疾患編/組織マネジメントと高齢者リハビリ編)』
『リハビリテーション職種の在宅リハビリ・ケア』
などがある。
理学療法士として、呼吸リハビリテーションおよび運動器リハビリテーションを専門とし、
臨床・教育・マネジメントを横断した実践的な知識と技術を提供している。
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