高齢者の入浴動作で転倒を防ぐための評価ポイントと指導方法

入浴は、日常生活動作(ADL)の中でも転倒リスクが高い場面と言われています。
特に高齢者にとって、浴室空間は滑りやすく、温度差による血圧変動も起きやすいため、身体的・環境的な負担が大きい動作にもなります。
そこで今回は『転倒リスクを減らすための入浴動作指導のポイント』を、私の経験からお伝えいたします。

1.動作の順序を「言語化」して伝える
最初のポイントは、「動作の順序を明確に伝える」ことです。
多くの方は自分のペースや記憶に頼ってなんとなく動いてしまいがちですが、それが不安定さを高めたり、ふらつきの原因になることもあります。
たとえば、「ドアを開ける → 手すりにつかまる → 右足を上げて浴槽をまたぐ」
といったように、動作を細かく分けて具体的に言語化して伝えることで、対象者の動きに「意識のスイッチ」を入れることができます。

2.姿勢の準備と重心移動を整える
次に重要となるのが、動作前の姿勢の準備です。
浴槽をまたぐ前に両足を揃え、背筋を伸ばすよう促すだけでも、バランスは格段に安定します。
特に片麻痺のある方では、非麻痺側への過剰な依存が起きやすく、姿勢の軸が崩れやすくなります。
麻痺側の足をしっかり「床面に接地させる」感覚を掴んでもらったり、視線で確認する習慣をつけてもらうことで、適切な重心移動を引き出すことができます。
また、浴槽のまたぎ動作は「段差昇降」と類似しています。
日常的にステップ台などで段差昇降の訓練を行うことが、入浴動作の安定にもつながります。

3.実際の環境でリスクを見極める
訓練室では上手くできていたのに、実際の浴室ではうまくいかない。
そういった経験をされた方も多いのではないでしょうか。
「訓練と実際とのギャップ」を埋めるには、実際の入浴環境を確認することが不可欠です。
・手すりの位置や高さは適切か
・浴槽の縁が高すぎないか
・床が滑りやすくなっていないか
・照明が暗くないか
等といった点を、他職種やご家族と連携して確認することが大切です。
住宅改修の提案や福祉用具の導入も、OTとして積極的に関わっていきたい部分です。

4.「怖さ」に寄り添う声かけ
見落とされがちなのが、利用者の「心理的な不安」です。
過去に浴室での転倒経験がある方ほど、「また転ぶかもしれない」という恐怖心から動作がぎこちなくなります。
この心理的な要素は、身体能力の低下以上に転倒のリスクを高めることもあります。
まずはそうした不安感を持っていることを受け入れ・共感する姿勢を持ち、「慌てなくて大丈夫です」「ここに手を置けば安心ですよ」といった安心を与える声かけが、利用者の動作に余裕を生み出します。
時には、スタッフ自身がゆったりとした動作を「モデル」として見せることも効果的です。

入浴は、清潔保持だけでなく、その人の生活の質(QOL)や自己肯定感に大きく関わる行為です。
ただ「安全に入れればいい」というだけでなく、安心して・できる限り自立して行えることが、私たちリハビリテーション専門職が行う支援の目標です。
転倒を防ぐには、動作・環境・心理の三方向からのアプローチが鍵になります。
小さな違和感に目を向け、現場で「今できる工夫」を積み重ねていくことこそが、大きな事故を未然に防ぐ力になります。

ぜひ、みなさんの支援にも取り入れてみてください。

地域・在宅のリハビリテーションが学びたい方はこちら

投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。

 

関連記事