リハビリテーション部門の管理職に求められる役割は多岐にわたるが、その本質は「緊急事態への対応力」であると考えている。
平時の運営はマニュアル化や仕組み化により誰でも一定レベルまで到達できる。
しかし、想定外のトラブルが発生した瞬間に、部門全体の命運は管理職の判断にかかっているのである。
リハビリ部門では、突発的なスタッフ欠勤、重度患者の急変対応、病棟・外来の想定外の依頼増、介護保険部門との調整不備、診療報酬・介護報酬改定など緊急事態が起こり得る。
これらは現場レベルで解決できる問題ではなく、管理職が責任を持って状況を把握し、優先順位を整理し、最適解を導き出さなければならない。
重要なのは、緊急時には「普段の管理力」がそのまま露呈するという点である。
日頃からコミュニケーションが取れている管理者は、スタッフが自然と協力してくれる。
逆に、普段から距離を置きすぎている管理者は、非常時に誰も動かない。
平時の準備こそが、緊急時の対応力を左右するのである。
また、緊急時に管理職が発揮すべきは「スピード」と「方向性」である。
情報収集に時間をかけすぎると現場は混乱し、判断が遅れれば患者・利用者のリスクや運営の破綻につながる。
完璧ではなくとも仮決定を出し、現場の動きを止めない。これが危機管理の鉄則である。
そして、緊急時の判断には「価値観の軸」が問われる。
安全を優先するのか、生産性を維持するのか、スタッフの負担をどう調整するのか。
管理職としての哲学がなければ、場当たり的な対応になり、信頼を失う。
だからこそ管理職には、日頃から「判断の基準」を明確にしておくことが欠かせない。
結局のところ、リハビリ部門の管理職の真価が問われるのは、静かな平日ではなく、不測の事態が起きた瞬間である。
緊急事態で部門の空気を安定させ、混乱を収束させ、現場の安心感を生み出す。
これこそが管理職の最大の価値であり、リーダーシップの核心である。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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