リハビリ現場における医療過誤を防ぐために必要なリスクマネジメント

医療事故医療過誤はしばしば同義的に扱われるが、その意味は異なる。

医療事故とは、医療行為の過程で患者に何らかの不利益や損害が生じた出来事を指し、そこに過失の有無は問われない。

一方、医療過誤とは医療従事者の注意義務違反によって生じた損害を指す。

つまり、医療過誤は医療事故の中でも法的責任が発生しうる行為であり、医療従事者が行う判断や行為が「一般的に求められる基準」から逸脱した場合に該当する。

リハビリテーション領域では、医療過誤の発生要因は評価の不備、介入中の転倒、誤嚥、過剰な負荷による再損傷などが代表的である。

特に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が直接患者に身体的介入を行う特性上、一瞬の判断ミスが重大な結果を招く可能性がある。

したがって、過誤を防ぐためには臨床技術だけでなく、リスクマネジメントの視点が不可欠である。

医療過誤を最小化するポイントとして、まず重要なのはインフォームドコンセントの徹底である。

患者に対して介入の目的、方法、起こりうるリスクを丁寧に説明し、同意を得ることが基本となる。

次に、記録の充実が挙げられる。評価結果や治療経過を客観的に記録しておくことで、万が一のトラブル発生時にも根拠を示すことができる。

また、チームでの情報共有も欠かせない。

多職種が関与するリハビリ場面では、担当者間の認識のずれが事故につながることがある。

定期的なカンファレンスや申し送りの徹底により、患者情報の齟齬を防ぐ体制を整えることが重要である。


インフォームドコンセント・カルテ記録・情報共有が大切

さらに、安全教育とリスクシミュレーションの継続が過誤防止に直結する。

転倒や誤嚥、機器トラブルなど想定される事故を事前にシミュレーションし、スタッフ全員が初動対応を共有することで、事故発生時の被害を最小限に抑えられる。

最も避けるべきは「慣れによる油断」であり、日常の業務を常に緊張感を持って遂行する姿勢が求められる。

リハビリテーションにおける安全管理は、技術の巧拙よりも組織的な仕組みと意識改革によって成り立つものである。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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