高齢者における転倒の30%~50%に軽度の外傷が、10~15%に骨折を含む外傷が発生すると報告されており、転倒全体の1~2%が大腿骨近位部骨折を発生するとされている。
また、大腿骨頸部骨折の98%の受傷機転は転倒が原因だとも言われている。
また、脆弱性骨折で言うと、上腕骨骨折、前腕骨折においても前者が97%、後者が100%が転倒によるものであったとの報告もある。
椎体骨折については、転倒による受傷率は、報告によりまちまちであるが33%や50%といわれており、他の骨折よりもかなり低いのが分かる。
この理由としては、物を持ち上げる、勢いよく座る、体幹の屈曲動作等が原因でも受傷するからであり、場合によっては何のきっかけもない。と訴える症例もいるからではないかと考える。
これらの報告から分かるように、転倒と骨折は密接に関わっている。
ただここで一つポイントとなるのが転倒=骨折ではないという事である。
転倒により骨折するのは10%である。
ーなぜ転倒したら骨が折れるのか?
ではなぜ転倒すれば骨が折れてしまうのかについて説明する。
骨折リスク指数=負荷荷重➗骨折荷重。
この指数が1を超えると、骨折する。
あくまで理屈の話ですが、この理論がかなり面白く、転倒と骨折を説明しやすくなる。
・骨折荷重=骨折を引き起こすのに必要な最小荷重のこと。
・負荷荷重=骨に加えられる負荷のこと
負荷荷重が、骨折荷重を上回ると骨が折れる。
当たり前の話ではあるが、ここでポイントになってくるのは高齢になると骨折荷重の閾値が低くなるという点である。
仮に、同じ身長の20歳の男性と90歳の男性が、同じ高さ・同じ場所に転倒したとする。
骨折したのは後者の90歳の方のみ。この場合、負荷荷重はほぼ同じである。
それなのになぜ折れるのか。それは
骨折荷重の閾値が違うからである。
90歳の方が骨折荷重の閾値が低く、20歳の方が高い。
なので、同じ負荷であったとしても、折れる・折れないの差が出てくる。
ここから気付けることは、最終的には転倒するかどうかではなく、【骨が折れやすいかどうか】だということ。
20歳が100回転倒しても、そう簡単に骨は折れないということである。
もう少しこれについて深掘りたいと思う。
大腿骨近位部を例にとる。
そもそも骨折荷重は、新鮮屍体骨に転倒を模した衝撃を機械的に与える実験により、若年成人で7,200N、高齢者で3,500Nとされている。
高齢者の方が、2倍以上折れやすいということである。
この値をベースに、次は転倒による負荷荷重の大きさについて説明する。
若年成人においての実験により、筋弛緩時では5,600Nの衝撃荷重が立位からの転倒時にかかるとされている。
この5600Nの負荷荷重に対し、若年成人では先程の7,200Nの骨折荷重。
つまり、骨折リスク指数に当てはめると、《5600÷7200=0.77…》よって骨折リスク指数は1未満となり、骨折の危険性は低いと言える。
一方、高齢者では骨折荷重が 3,440N前後であった。
そのため、骨折リスク指数は《5600÷3440=1.62…》
この結果の通り、骨折リスク指数は1以上となるので、もし転倒時に股関節外側に直接衝撃が加わった場合だと、理論的には大腿骨を骨折することとなる。
このように、非常にシンプルではありますが、骨折荷重と負荷荷重の関係だけで骨折リスクを考えると、高齢者は転倒すれば高頻度に骨折を起こすことが考えられる。
更に、高齢者の場合で骨粗鬆症を合併していれば、骨折荷重の閾値は更に低下していることが懸念される。
投稿者
堀田一希

・理学療法士
理学療法士免許取得後、関西の整形外科リハビリテーションクリニックへ勤務し、その後介護分野でのリハビリテーションに興味を持ち、宮﨑県のデイサービスに転職する。
「介護施設をアミューズメントパークにする」というビジョンを掲げている介護施設にて、日々、効果あるリハビリテーションをいかに楽しく、利用者が能動的に行っていただけるかを考えながら臨床を行っている。
また、転倒予防に関しても興味があり、私自身臨床において身体機能だけでなく、認知機能、精神機能についてもアプローチを行う必要が大いにあると考えている。そのために他職種との連携を図りながら転倒のリスクを限りなく減らせるよう日々臨床に取り組んでいる。
・参考文献
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細井孝之:転倒と骨折. 第54 回日本老年医学会学術集会記録
Courtney AC, Wachtel EF, Myers ER, Hayes WC: Agerelated
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Robinovitch SN, Hayes WC, McMahon TA: Prediction of
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