リハビリ職種として日々臨床や組織運営に携わる中で、誰もが一度は「この職場で働き続けるべきか」と迷う瞬間を迎えるものである。
退職は人生に大きな影響を与える決断であり、感情的に動くのではなく、一定の判断軸を持つことが重要である。
第一に考えるべきは、職場環境が自らの成長やキャリア形成に資するかどうかである。
学びや挑戦の機会が継続的に提供され、努力に応じた評価が得られる環境であれば、多少の不満や課題があっても成長の糧とすることができる。
逆に、能力が発揮できず停滞感ばかりが強まる場合は、長期的にみてキャリアの損失となる。
次に、人間関係や組織文化の質が大きな要素となる。
リハビリ職種はチーム医療の一員として協働することが不可欠であるが、不信や分断が常態化した職場では自己効力感が低下し、仕事への意欲を失いやすい。
ここで重要なのは、一時的な衝突や不和ではなく、構造的に改善が望めない状況かどうかを見極める点である。
さらに、労働条件やワークライフバランスも軽視できない。
長時間労働や過度な負担が慢性化し、心身に支障をきたすレベルに達している場合、自己犠牲を続けることは長期的なキャリアの持続可能性を損なうことになる。
ここで一つの指標を提示したい。
それは「自分では解決できないことが長期間継続する場合は退職を考えるべき」という視点である。
問題解決のために努力しても状況が変わらず、自身の成長や生活に悪影響を及ぼすようであれば、その環境に留まる合理性は薄れていく。
この考え方については動画でさらに解説したい。
最後に、退職は逃げではなく前進の一手であることを強調したい。
環境を変えることで新しい学びや出会いが得られ、自身のキャリアに新たな可能性が広がる。大切なのは、自らの価値観と将来像に照らし合わせ、主体的に判断する姿勢である。
退職の決断は容易ではないが、判断軸を持つことで迷いに振り回されず、納得のいく選択を導くことができるのである。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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