2026年度の診療報酬改定に向けた議論の中で、リハビリテーション職種に直結する二つの重要な論点が浮かび上がっている。
一つは廃用症候群リハビリテーションにおける1日7単位以上の提供効果に関する問題であり、もう一つは看護補助業務とのタスクシフトである。
これらは一見別個の課題に見えるが、いずれも「リハ職の役割をどう再定義するか」という根本的な問いを突きつけている。
厚生労働省のデータによれば、廃用症候群リハにおいて1日7単位以上のリハビリを実施しても、FIM利得は頭打ちになる傾向が示されている。
従来は「多く介入すれば効果も上がる」という前提で単位数を積み上げてきた現場も少なくない。
しかし、科学的データに基づけば、一定以上の提供が必ずしもアウトカムに結びつかないことが明らかとなった。
運動器リハビリ料においても2024年度改定で1日6単位超の制限が設けられたことを踏まえれば、廃用リハについても包括化や上限設定が導入される可能性は高い。
これは病棟運営や人員配置の前提を揺るがしかねず、経営面でも臨床面でも変化への備えが求められる。
一方、看護職員や看護補助者の不足が深刻化する中で、理学療法士や作業療法士などリハビリ職種の業務をどこまで生活支援に振り分けられるかが議論されている。
食事介助、入浴準備、移乗補助といった業務を看護補助者が十分に担えない現状において、リハ職が一部の業務をシェアする可能性が示されたのである。
もちろん、リハビリ職種の専門性は機能回復や生活再建にあるため、生活介助へのタスクシフトには賛否両論がある。
しかし、現実として「人がいない」状況をどう埋めるかという問題は避けて通れず、リハビリ職種にとってもチーム医療における役割の再考を迫られることになる。
この二つの議論は、いずれも「量から質へ」の転換を象徴している。
単位を積み上げるだけでは評価されず、生活支援を切り離すこともできない。
リハビリ職種が真に価値を発揮するためには、科学的根拠に基づいた適正な介入と、多職種協働の中での柔軟な役割遂行が不可欠である。
制度改定は脅威であると同時に、新しい存在意義を示す好機でもある。
今後の議論を注視しつつ、現場での取り組みを通じて自らの専門性を再定義していくことが、次代のリハビリ職種に求められる課題である。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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