日本の労働者は、かつてない厳しい局面に直面している。
ワークライフバランス推進が進められているが、下流老人、長時間労働、低賃金、過労死、サービス残業といった課題は依然として根深い。
特に医療・介護、物流、IT業界では人員不足と業務量増加が常態化し、働き方の質的改善が追いついていない。
かつては、和を重んじる文化のもと、会社が労働者を守り、労働者が会社を支える相互依存の関係が機能していた。
しかし、長期不況や社会保障費増大による財政圧迫の中で、多くの企業は労働者保護よりも収益確保を優先し、2000年代以降は好待遇を削減しつつ生産性向上に舵を切った。
結果として、賃金は上がらず労働負荷だけが増大する構造が固定化している。
この状況では、労働者が与えられた仕事量を増やしても報われにくい。
なぜなら、多くの人は「労働時間の提供」だけで賃金を得ようとしているからである。
本来、賃金は労働時間ではなく、提供した「労働価値」によって得られるべきものである。
価値提供を軸にすれば、得意分野や関心領域で働き、報酬を高める可能性が広がる。
特に医療・介護職は、保険制度に守られ最低限の業務でも賃金が得られる構造のため、この価値提供の発想が乏しい。
しかし、その環境は企業論理の下で容易に切り捨てられ得る。
今こそ「労働時間依存型」から「労働価値提供型」への転換、すなわちWork Shiftが求められている。
この変化に気付き行動できる者だけが、企業依存から自由になれる時代である。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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