生活期における装具療法について

脳卒中などの発症後、急性期から回復期を経て、患者の人生の中で最も長い期間となるのが「生活期(維持期)」である。

ヒトは歩く機能によって体力を維持することができ、歩くことは廃用症候群の予防や健康寿命の延伸に結びつくとされている。

この歩行を支えるために下肢装具が処方される機会は多いが、装具の役割は退院時に完成して終わるものではない。

今回は生活期において、変化する身体状況や装具の劣化に対し、リハビリテーション専門職がどのように関わるべきかを考察する。

1. 途切れるフォローアップと地域連携の現状

退院して在宅生活へ移行すると、装具を作成した急性期や回復期の病院で、外来による継続的なフォローアップを受けることは困難になることが多い。

さらに、現在の地域包括ケアシステムにおいて、義肢装具士の関与は明文化されていないのが実情である。

そのため、生活期においては、通所リハビリテーションや訪問リハビリテーション、訪問看護などで関わるスタッフが、装具の適合や状態を評価する役割を担うこととなる。

しかし現状として、介護現場の専門職は、その装具がどのような目的で処方されたのか、過去の修理履歴がどうなっているかを知るすべがないという課題を抱えている。

医療から介護への連携において切れ目のない情報伝達を行うため、近年では「装具ノート」を導入して運用するなどの取り組みも始まっている。

2. 装具における「トレードオフ」の評価

機能的にどんなに適した装具でも、患者自身が装着し、使ってもらえなければ意味がない。

生活期で装具を評価する際、専門職は装具デザインの「トレードオフ(一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ない状態)」を見極める必要がある 。

装具の実用性は、立位歩行の安定性などの「機能因子」、装着のしやすさや外観などの「現実因子」、変形や廃用予防などの「医学因子」の3つに分けて分析される。

退院直後は医学因子や機能因子が優先されていたとしても、生活期では着脱の手間という現実因子が足枷となり、装具が使用されなくなるケースがある。

生活期では常時使用するため、これらの因子を総合的に検討し、現在の生活において装具の性能や使用方法が合理的かどうかを判断しなくてはならない。

3. 機能変化への対応と細部への工夫

生活期が長期化するにつれ、加齢に伴う筋力低下、拘縮や変形、痙縮の進行などが生じる。

患者が受け入れやすい簡易な装具を単に使い続けることが、最良の装具療法とは限らない。

身体機能が低下すれば、それに対応した機能を持つ装具へ変更することも必要になる。

しかし、一度簡易すぎるものを処方してしまうと、後から金属支柱などの重装備な装具への変更を提案しても、利用者の受け入れが困難になることが多いという問題もある。

また、下肢機能そのものだけでなく、他疾患による機能低下への対応も求められる。

例えば、筆者のデイサービスにて最近あった事例としては頸椎症性脊髄症などにより手指の機能障害が悪化し、装具の細いベルトをつまむ(ピンチ)動作が困難になった事例があった。

このような場合、ベルトの折り返し金具(角環)を「クイックリング」へと変更することで、片手での装着が容易になり、締着後のズレを防ぐことが可能になる。


装具を新調するだけでなく、既存の装具の形で何とか適合性を改善するように工夫することも、生活期における重要な支援である。

まとめ

生活期の装具療法は、処方時に「適合しているか」という短期的なアウトカムだけで終わらせてはならない。

いつまで実用的な歩行や活動を維持できたかという長期的なアウトカムは、適切なフォローアップシステムによってもたらされる。

地域の現場で関わるリハビリテーション専門職は、常に変化する障害に対して評価を行い、適合性だけでなく予後予測や患者のアドヒアランスも勘案して、装具の適応を見極めていくことが求められる。

活動し続ける体を保持するために、日々の生活の中で装具を適切に管理・調整していくことこそが、利用者の生活を支える基盤となる。

投稿者
堀田一希


・理学療法士

理学療法士免許取得後、関西の整形外科リハビリテーションクリニックへ勤務し、その後介護分野でのリハビリテーションに興味を持ち、宮﨑県のデイサービスに転職。現在はデイサービスの管理者をしながら自治体との介護予防事業なども行っている。

「介護施設をアミューズメントパークにする」というビジョンを持って介護と地域の境界線を曖昧に、かつ、効果あるリハビリテーションをいかに楽しく、利用者が能動的に行っていただけるかを考えながら臨床を行っている。

また、転倒予防に関しても興味があり、私自身臨床において身体機能だけでなく、認知機能、精神機能についてもアプローチを行う必要が大いにあると考えている。
そのために他職種との連携を図りながら転倒のリスクを限りなく減らせるよう日々臨床に取り組んでいる。

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