2026年度改定では、「病院機能の明確化(急性期・包括期・回復期などの役割整理)」をさらに進める流れが強い。
とくに、高齢者の軽症〜中等症急性期が増える実情を踏まえ、救急受入→治療→リハ・栄養・口腔→退院支援までを運用する設計が目立つ。
その中で「地域包括医療病棟」と「地域包括ケア病棟」は、どちらも包括期の受け皿として改定の影響が大きい領域である。
【地域包括医療病棟:改定の狙いと全体像】
地域包括医療病棟は「高齢者の中等症までの救急疾患等の幅広い受入」を推進する観点から、平均在院日数・ADL低下割合・重症度/医療・看護必要度の基準を見直す方針である。
さらに、医療資源投入量や急性期病棟の併設状況に応じた評価導入、リハ・栄養・口腔の一体的取組を促すための加算体系見直しが掲げられている。
【地域包括医療病棟:施設基準の見直し(要件)】
新案では、85歳以上割合に応じて在院日数や退院時ADL低下割合の基準を緩和し、誤嚥性肺炎・尿路感染等の頻度の高い疾患特性も踏まえて「重症度、医療・看護必要度」基準を見直すとしている。
施設基準の例として、一般病棟用の重症度・医療看護必要度(Ⅰ/Ⅱ)に関する基準(指数●割●分以上等)を満たすこと、あるいはデータ提出体制を整備した上で必要度Ⅱの基準を満たすこと等が示されている。
加えて「入院した日に介助を特に実施している患者を5割以上入院させる」こと、平均在院日数は原則20日以内としつつ「85歳以上の患者割合が2割増すごとに1日加えた日数以内」とする要件が明記されている。
【地域包括医療病棟:新設(再編)加算=リハ・栄養・口腔連携加算(要件)】
加算は一本化(80点)から、区分に応じた「リハビリテーション・栄養・口腔連携加算1/2」へ再編される。
地域包括医療病棟における「リハビリテーション・栄養・口腔連携加算」は、従来の一本化された評価から、病棟の取り組み水準に応じて加算1/加算2へ再編される方向である。
加算1は現行の考え方を基本に引き継ぎ、病棟ごとに専従の常勤PT・OT・STを2名以上配置(うち1名は専任でも可)するなど、体制要件は従来どおり高い水準を求める。
一方、加算2は、加算1と同様に連携体制(人員配置や研修等)を求めつつも、プロセス・アウトカム評価の一部を“取り組みやすい形に緩和した入門版”として位置づけられている。
具体的には、プロセス・アウトカム評価について、加算1では「入棟後3日以内の疾患別リハ開始割合」「休日リハの提供量(平日比)」「退院・転棟時のADL低下割合」「院内褥瘡発生割合」など複数の指標を、明確な基準値(例:8割、ADL低下3%未満等)で一括して満たすことが求められている。
これに対し加算2では、早期リハ(入棟後3日以内の提供割合8割以上)と褥瘡(院内発生の所定分類で2.5%未満)といった中核指標は押さえつつ、休日リハの平日比およびADL低下割合については、短冊上「●割以上」「●%未満」とされており、加算1より基準値を緩める(達成しやすくする)ことが読み取れる。
さらに運用面では、加算2における専従療法士について、疾患別リハ等の「専従者」との兼務は原則不可としつつも、排尿自立支援加算・精神科リエゾンチーム加算・摂食嚥下機能回復体制加算に関する療法士業務は兼務可能とされており、現場運用上のハードルを下げる工夫も盛り込まれている。
【地域包括ケア病棟:改定の狙いと全体像】
地域包括ケア病棟は「在宅医療や協力対象施設の後方支援機能をより高く評価」するため、初期加算の対象患者範囲と評価、そして退院支援に係る診療報酬項目の包括範囲を見直す方針である。
具体的には、在宅患者支援病床初期加算の対象を「救急搬送された患者」から「緊急入院した患者」へ拡大し、それ以外の患者に対する初期加算も急性期患者支援病床初期加算を参考に見直すとしている。
【地域包括ケア病棟:新設/見直しの初期加算(要件)】
算定要件の骨格は次の通りである。
①急性期医療を担う他院一般病棟からの転院、または自院(急性期を担う保険医療機関)一般病棟からの転棟患者は「急性期患者支援病床初期加算」の対象、②介護老健・介護医療院・特養・軽費・有料老人ホーム等または自宅からの入院患者は、治療方針に関する患者/家族の意思決定支援を行った場合に「在宅患者支援病床初期加算」の対象、③いずれも転棟/転院/入院日から起算して14日を限度に「1日につき所定点数へ加算」する、である。
【地域包括ケア病棟:包括範囲の見直し(要件上の扱い)】
退院支援の実務を回しやすくする観点として、退院時共同指導料2および介護支援等連携指導料は、地域包括ケア病棟の包括範囲から除外(=包括に含めず別算定可能)とされている。
【地域包括ケア病棟:新設の連携加算(要件)】
さらに、地域包括ケア病棟でもリハ・栄養・口腔の一体的取組を推進するため、「リハビリテーション・栄養・口腔連携加算」を算定可能とする方針が明記されている。
加えて、その算定患者について入院栄養食事指導料・栄養情報連携料も算定可能としている。
加算の運用イメージは地域包括医療病棟の注10と同様の扱いである旨も示されている。
【2つの病棟をわかりやすく整理】
地域包括医療病棟は「高齢者の救急(軽症〜中等症)を幅広く受け、治療+包括的ケアを短期で回して退院へつなぐ」病棟であり、在院日数・ADL・必要度などの基準を高齢者特性に合わせて調整しつつ、リハ・栄養・口腔の連携を加算の算定を促す方向である。
域包括ケア病棟は「在宅・施設の後方支援(緊急入院の受け皿)と退院支援を強く評価する」病棟であり、初期加算の対象範囲拡大(緊急入院を評価)と、退院支援関連の評価(包括範囲の整理)、そして同様にリハ・栄養・口腔連携を前面に出す方向である。
【今後は統合が進む】
両病棟は「高齢者の急性増悪〜退院までを、治療・看護・リハ・栄養・口腔・退院調整で一体的に支える」という役割が極めて近い。
制度側も、どちらにもリハ・栄養・口腔の連携加算を置き、後方支援と短期在院を強く意識した要件へ寄せている。
このまま「包括期の入院医療」を一本の思想で整理する流れが進めば、将来的には名称・区分の統合(あるいは共通の入院料体系への再編)が現実味を帯びると考える。
現場としては、どちらの病棟であっても救急〜在宅・施設への接点を数値と運用で示せる体制整備が競争力になる局面である。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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