訪問看護の改定でまず押さえるべきは、運営ルールの明確化と、誘引・誘導の禁止の強化である。
指定訪問看護事業者には、申請・届出・請求を適正に行うことに加え、健康保険事業の健全運営、特定の主治医や特定事業者への誘導の禁止、そして経済上の利益(値引き等)による誘引の禁止が義務として整理される。
さらに、利用者紹介の対価として金品等を提供して誘引する行為も禁じられる。
次に、記録と実態の可視化が一段強まる。
訪問看護記録書には、訪問年月日やバイタル、病状、実施内容、所要時間の概要だけでなく、評価の記載を求める方向が明確化されている。
加えて、実務上重要なのは、日々の記録として利用者氏名・訪問場所・開始時刻と終了時刻(実際)・訪問人数等を記録し保管する点である。
ここは監査・指導の観点でも運用が変わり得る。
運用面では、訪問の質を担保するために、訪問時間の考え方も改めて釘が刺される。
訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅱ)は30分〜1時間30分程度が標準であり、やむを得ない事情を除き、標準を下回る短時間訪問が同一日内で頻繁に行われる場合は、指定訪問看護を実施したとは認められない点に留意が必要である。
また、前回の終了から2時間未満で、20分以上30分未満の訪問を行う場合(緊急を除く)は、それぞれの所要時間を合算して1回扱いとする整理も入る。
短時間・頻回の積み上げを制度側が抑制する構造である。
一方で、連携と重症対応は厚くなる。
訪問看護医療情報連携加算が示され、ICT等で記録された診療情報を活用して計画的管理を行った場合に月1回算定できる枠組みである。
施設基準として、診療情報等を常時確認できる体制、平時からの連携体制、見やすい場所への掲示、そして掲示事項の原則ウェブ掲載まで求める設計になっている。
さらに精神科領域では、地域の関係者と連携し支援ニーズの高い利用者に精神科訪問看護を提供する訪問看護ステーションを、機能強化型として新たに評価する方向が示される。
評価体系の面では、訪問看護管理療養費の見直しが大きい。
月初の評価充実、月2日目以降は管理療養費1と2を統合し届出不要としつつ、訪問日数と単一建物居住者数で細分化する方針が示される。
加えて、機能強化型の中に新たな類型(4)を設け、精神科の評価(上記)と連動させる設計である。
重症・特殊ニーズへの手当ても拡充される。
過疎地域等では移動負担を踏まえ、特別地域訪問看護加算の要件を「移動時間のみ」から、移動+提供の合計時間が極めて長い場合も含めて評価する方向が示される。
また、難治性皮膚疾患では、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を受ける利用者を、週4日以上訪問看護基本療養費等を算定できる対象に追加する。
乳幼児加算も、状態に応じた質の高い提供の観点から、超重症児等以外の評価を見直す方向が示される。
そして象徴的なのが、包括型訪問看護療養費の新設である。
高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションが、当該住まいの対象利用者に対し、24時間体制で計画的または随時対応による頻回訪問を行った場合、1日当たりで包括評価する体系を新設する。
ここは現場の提供実態(短時間・頻回)を前提に、出来高の積み上げとは別の評価枠を用意した点が重要である。
最後に、広い意味で在宅領域のコスト環境にも触れる。
令和8〜9年度の物価上昇に段階的に対応するため、外来・在宅の算定に併せて算定可能な物価対応料を新設する方針が示されている。
在宅サービス提供側は、人件費・移動コストの上昇と制度対応をセットで捉える必要がある。
診療報酬・介護報酬に関して理解を深めたい方はこちらから →セミナー一覧
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
経営相談・セミナー依頼はお気軽にお問い合わせください。
