背臥位・リクライニング位・座位による換気量の違い

体位は換気量や肺容量に影響を与える重要な因子である。

特に背臥位、リクライニング位、座位では胸郭運動や横隔膜の動きが異なり、結果として一回換気量や呼吸効率に差が生じる(図1)。

背臥位では、腹部臓器の重みが横隔膜を頭側へ押し上げるため、肺の拡張が制限されやすい。

その結果、機能的残気量は低下し、一回換気量も小さくなりやすい。

高齢者や臥床時間の長い患者では、この影響がより顕著になると考えられる。

一方、背部を30〜60度程度起こしたリクライニング位では、腹部臓器の圧迫が軽減され、横隔膜の可動性が改善する。

先行研究では、背臥位と比較してリクライニング位において一回換気量が有意に増加することが報告されている1)

これは呼吸筋がより効率的に働き、肺胞換気が改善するためである。

さらに座位では、体幹が垂直に近づくことで胸郭の可動域が最大化される。

座位では肺活量や努力性肺活量、一秒量が背臥位より高値を示す傾向があり、呼吸機能全体が向上しやすいことが示されている2)

 

図1 背臥位に比べて、リクライニング・座位では換気が向上する

特に換気量の確保が求められる場面では、座位は最も有利な体位といえる。

ただし、座位保持能力が十分でない症例では、姿勢を保つための筋活動が増え、エネルギー消費が高まる。

その結果、換気が過度に亢進し、呼吸困難感が増強する可能性がある点には注意が必要である。

以上より、体位調整は単なる安楽のためではなく、換気量を改善し呼吸負荷を調整するための重要な介入と位置づけられる。

特に低換気や呼吸困難を呈する症例では、背臥位に固執せず、症状と耐久性を評価しながら、リクライニング位や座位を段階的に選択することが臨床上重要である。

寝たきりの患者における呼吸苦の改善、排痰などには積極的にリクライニングを利用し、QOLの向上に努めることが重要である。

●参考文献
1)Yamada Y, et al. Metabolic and ventilatory changes during postural change from the supine position to the reclining position in bedridden older patients. Medicine (Baltimore). 2023;102(10):e33250. doi:10.1097/MD.0000000000033250.

2)Katz S, Arish N, Rokach A, Zaltzman Y, Marcus EL. The effect of body position on pulmonary function: a systematic review. BMC Pulm Med. 2018;18(1):159. doi:10.1186/s12890-018-0723-4. PMID:30305051.

投稿者
高木 綾一

株式会社WorkShift 代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
呼吸療法認定士
修士(学術/MA・経営管理学/MBA)
関西医療大学保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。

医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を強みとする。

セミナー講師としても多数登壇し、現場の課題解決につながる知見の共有を行っている。

関連記事