リハビリに必要な服薬管理〜抗凝固薬・降圧薬・利尿薬をどう考えるか〜

はじめに

リハビリテーション中に「今日は顔色が悪い」「いつもよりふらつきが強い」といった違和感を覚えたことはないだろうか。

新人の頃の私は、動作や筋力ばかりに目が向き、服薬については「看護師や医師が管理するもの」とどこか距離を置いていた。

しかし臨床を重ねるにつれ、服薬はリハビリテーションの前提条件そのものであると強く感じるようになった。

なぜリハビリテーションに服薬管理の視点が必要か

私たちPTは薬の処方を行うことができないが、それでも服薬を知る必要がある理由は明確である。

我々が行うリハビリテーションの手段の一つである運動療法は、薬の作用を強めもすれば、リスクを顕在化もさせるからという点である。

・血圧を下げる薬 × 運動
・血液をサラサラにする薬 × 転倒
・水分を排出する薬 × 発汗

これらはリハビリテーション中に確実に重なる場面である。

服薬を知らずに運動を組み立てるのは、「地図なしで地雷原を歩く」に等しい。

ゆえに管理というより理解が必要である。

抗凝固薬:転倒・打撲を軽く見ない

抗凝固薬(ワルファリン、DOACなど)は、脳梗塞既往や心房細動で広く用いられる。

我々リハビリテーション職種がまず意識すべきは次の点である。

・出血しやすい、皮下出血が拡大しやすい
・頭部打撲は特に要注意

重要なのは「転ばせない」だけでなく「ぶつけない」視点である。

軽い接触でも翌日に内出血が拡大したり、数時間後に症状が進行することがある。

運動強度をやみくもに下げるのではなく、環境設定と動作選択を慎重にする。

これが抗凝固薬使用者への基本姿勢である。

降圧薬:立ち上がりと運動後に注意

降圧薬服用者は非常に多く、見落としがちなポイントで転倒やふらつきが起きやすい。

注意したい場面としては、起立・立ち上がり直後、運動終了直後、水分摂取が少ない日などである。

降圧薬と運動の組み合わせにより、起立性低血圧が顕在化することがあり、普段は問題がない人ほど、リハビリという非日常の負荷で症状が出やすい。

立ち上がり前に表情を観察し、終了後すぐに歩かせない。

問いかけは「大丈夫ですか?」より「ふらつきありませんか?」の方が具体的でよい。

一言の声かけと間の取り方が事故を防ぐ。

利尿薬:脱水と電解質の視点を忘れない

利尿薬は心不全や高血圧で多用される。

リハビリテーション職種にとってのキーワードは脱水、筋けいれん、易疲労感である。

リハビリ中に起こりやすいこととしては、発汗による水分喪失、筋がつりやすい、いつもより疲れやすいなどである。

「今日はやけに疲れやすい」という背景に、利尿薬と運動負荷の相乗が潜むことがある。

水分摂取のタイミング調整や、今日は無理しないという判断も、立派なリハビリテーション介入である。

服薬と運動は切り離せない

服薬は安静時に作用し、運動は動的なストレスを与える。

両者が重なると、身体反応は教科書どおりには進まない。

だからこそリハビリテーション職種には、薬名の暗記ではなく、薬の方向性(どこにどう作用するか)を理解する視点が求められると感じている。

おわりに

服薬管理とは、リハビリテーション職種が薬を扱うことではない。

安全に運動を届けるための臨床判断力である。

・抗凝固薬ならぶつけない
・降圧薬なら急がせない
・利尿薬なら無理させない

この小さな意識の積み重ねが、事故を防ぎ、信頼を築く。

次にリハビリテーションに入るとき、カルテの服薬欄をほんの少し丁寧に眺め、読み解くことから始めてほしい。

投稿者
堀田一希


・理学療法士

理学療法士免許取得後、関西の整形外科リハビリテーションクリニックへ勤務し、その後介護分野でのリハビリテーションに興味を持ち、宮﨑県のデイサービスに転職。現在はデイサービスの管理者をしながら自治体との介護予防事業なども行っている。

「介護施設をアミューズメントパークにする」というビジョンを持って介護と地域の境界線を曖昧に、かつ、効果あるリハビリテーションをいかに楽しく、利用者が能動的に行っていただけるかを考えながら臨床を行っている。

また、転倒予防に関しても興味があり、私自身臨床において身体機能だけでなく、認知機能、精神機能についてもアプローチを行う必要が大いにあると考えている。
そのために他職種との連携を図りながら転倒のリスクを限りなく減らせるよう日々臨床に取り組んでいる。

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