退院支援の現場にいると、医師をはじめとする医療専門職や医療ソーシャルワーカーから介護認定が勧められたり、退院前に介護認定の申請を行う患者さんは少なくありません。
これは、在宅復帰後に何らかの介護保険サービスが必要になることを想定しての流れです。
しかし、実際に退院後の生活を見てみると、介護保険サービスを利用しないケースも意外と多いのです。
ご家族が十分に支援できる場合や、身体機能が自立しておりサービスを使うまでもない場合には、介護認定を受けても「結局使わなかった」という結果になることも珍しくありません。
また、訪問リハビリや通所リハビリの利用を勧められることもありますが、その背景には「在宅でもリハビリを続けた方がよいのでは」という漠然とした期待が含まれていることと推察します。
実際には、生活場面に即したリハビリの目標が明確になっておらず、「とりあえずリハビリを…」といった依頼に留まることもありでしょう。
これはデイサービスやヘルパーの利用、福祉用具の貸与でも同様です。
ご家族が「なんとなく心配だから」「周囲も使っているから」という理由で利用に繋がるケースも見受けられます。
もちろん、不安を解消するために専門職が関わること自体には意味があると考えます。
しかし、利用目的が曖昧なままでは、必要以上にサービスが漫然と続いてしまう可能性も否定できません。
医療・介護の財源は年々厳しくなっており、今後ますます適正利用が求められるようになります。
さらに、過剰なサービス利用は廃用性機能低下を招き、かえって対象者の自立を妨げてしまうリスクもあります。
だからこそ、私たち医療専門職は、対象者の状態や生活背景を丁寧に分析し、予後予測を立てたうえで「本当に必要なサービスは何か」「逆に不要なサービスは何か」を見極める姿勢が欠かせません。
単に介護認定を取ることを目的とするのではなく、生活をどう維持・改善していくのかという視点で支援を考える必要があります。
では、若手療法士の方々は退院支援の場面で具体的に何を意識すればよいのでしょうか。
私は、以下の3点を重要であると考えています(図1)。
『生活場面の具体的なイメージを持つ』
「在宅での移動はどうするのか」「入浴は誰が手伝えるのか」といった日常動作を具体的に想定し、必要な具体的支援を列挙することが第一歩です。
抽象的な機能回復だけでなく、退院後の環境における生活継続を意識しましょう。
『予後予測を共有する』
今後予想される状態の変化やリスク等について説明し、必要な支援の内容や利用・卒業するタイミングをイメージすることも大切です。
「退院直後は必要ですが、1~2か月もすれば徐々にお一人で行えるようになるはずなので、その時にはより良いご支援の内容についてケアマネジャーさん達と話し合いましょう」といった助言は、患者さん・ご家族の安心感につながります。
『優先順位をたてる』
将来の予後予測が行なえたら、その上で『何から・どのように解決を図っていくか』といったように優先順位を合ってることも必要です。
介護保険サービスは、その方の介護認定度によって上限となる単位数が決まっています。
そのため、何でもかんでもサービスを利用できるわけではありません。
図1 在宅復帰支援のポイント
もちろん、サービスだけではなくご自身やご家族の力を使った課題解決も積極的に検討すべきです。
予後予測をもとにした優先順位が検討されることは、課題解決に向けた段階付けの具体化にもつながります。
退院支援の場で療法士に求められるのは、介護認定の有無を判断することではなく、患者さんご本人のその人らしい生活を実現するために本当に必要な支援を見抜く力です。
時には「サービスを使わなくても大丈夫」と伝えられることも、私たちの専門性の一部だと考えています。
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投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。
