キャリアデザインは個人の努力である。
自分の価値観や強みを整理し、学びを積み、経験を選び取っていく営みは、最終的に本人が引き受けねばならない。
しかし、その努力が継続し、組織の成果へと接続されるためには、組織側の「キャリアマネジメント」が不可欠である。
個人のキャリア形成を支え、方向づけ、機会を提供する仕組みを持つことこそ、組織の責務である。
ところがリハビリ現場では、組織がキャリアマネジメントをほとんど行っていないにもかかわらず、「うちの従業員はキャリアのことを考えていない」「仕事の目標がない」と嘆く管理職が少なくない。
これは本末転倒である(図1)。
図1 キャリアマネジメントが「努力 → 成果」をつなぐ
目標が生まれないのは、個人の意識の低さだけで説明できない。
むしろ、目標を言語化し、成長の道筋を提示し、挑戦の場を設計する組織側の機能が欠けていることが原因である。
キャリアマネジメントとは、研修を年に数回用意することではない。
職能要件を明確にし、段階的な成長目標を示し、評価と育成をつなぐ運用を行うことである。
具体的には、役割期待の明文化、ケース経験の設計、メンターやOJTの配置、定期的な面談による振り返り、学習資源へのアクセス、挑戦のアサインなどが含まれる。
これらが整って初めて、個人は自分の努力をどこに向ければよいかを理解できる。
リハビリ部門では「忙しい」「人が足りない」を理由に、育成とキャリア支援が後回しになりやすい。
その結果、成長が個人任せとなり、学習は属人的になり、技術のばらつきが増え、離職や停滞が起こる。
組織の底上げに必要な機能を放棄しておきながら、個人の主体性不足だけを責めるのは、管理の責任放棄に等しい。
従業員にキャリアを考えさせたいのであれば、まず組織がキャリアを設計せよである。
個人の努力を前提にするからこそ、その努力が報われる環境を整えるべきである。
キャリアマネジメントは福利厚生ではない。
品質と生産性、そして組織の持続性を守る経営機能である。
リハビリ部門こそ、いま最優先で取り戻すべきである。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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