2026年以降の医療・介護経営の課題と展望

はじめに

2026年以降、医療・介護分野を取り巻く環境はさらに厳しさを増していくことが予想される。

物価上昇、人件費の高騰、労働人口の減少といった社会構造の変化に加え、診療報酬・介護報酬改定の影響は経営に直結する。

一方で、制度や加算に依存するだけの経営モデルは限界を迎えつつある。

これからの医療・介護経営では、制度の内側で最適化を図るだけでなく、組織としての在り方や価値提供の本質を問い直すことが不可欠となる。

本稿では、2026年以降を見据えた医療・介護経営の主要な課題を整理し、今後求められる視点について考察する。

1. 価格転嫁できない構造の中で問われる経営力

医療・介護業界は、診療報酬・介護報酬という公定価格のもとで運営されており、一般産業のように物価や人件費の上昇を価格に転嫁することができない。

この構造は2026年以降も大きく変わることはなく、むしろ経営環境は一層厳しくなると考えられる。

その中で明確になってきているのは、「同じ制度の中でも黒字を維持できる組織と、そうでない組織が確実に存在する」という現実である。

黒字を維持している組織の多くは、単なるコスト削減ではなく、稼働率を高める仕組みづくりや、選ばれる理由を明確にしたマーケティング、人材配置の最適化に力を入れている。

逆に、制度改定や報酬減への不満だけに終始し、集客力や提供価値の向上に取り組めていない組織ほど、物価高や人件費増の影響を強く受けている。

2026年以降は、「制度にどう対応するか」ではなく、「制度の中でどのような価値を提供できているか」が、より厳しく問われる時代になる。

2. 人材不足が組織を蝕む構造的リスク

医療・介護分野における人材不足は、すでに慢性的な問題であり、2026年以降も改善する見通しは立っていない。

人材が不足すると、採用のハードルを下げざるを得ず、結果として理念やビジョンと異なる価値観を持つ人材が組織に流入しやすくなる。

この状態が続くと、現場を支える管理職や中間層の負担が急激に増し、組織全体の疲弊につながる。

さらに問題なのは、人材不足の環境下では、社員教育やインターナルマーケティングが後回しになりやすい点である。

日々の業務を回すことが最優先となり、組織として人を育てる視点が失われていく。

その結果、サービスの質は徐々に低下し、利用者満足度の低下や離職率の上昇を招く悪循環に陥る(図1)。

2026年以降の医療・介護経営においては、「人を確保する」こと以上に、「人が定着し、成長できる組織をどうつくるか」が経営課題の中心になる。


図1 人材不足は採用ハードルとを下げる

3. 数字追求型経営から価値創出型マネジメントへ

医療・介護経営では、診療報酬や介護報酬の算定要件、施設基準、加算取得といった数字に意識が向きやすい。

しかし、それ自体が目的化してしまうと、本来提供すべき医療・介護サービスの質が置き去りにされ、コンプライアンス上の問題や現場の混乱を招くことになる。

2026年以降は、こうした近視眼的な経営スタイルはますます通用しなくなる。

これから求められるのは、数字を「結果」として捉え、その前提となるサービスの質や組織のあり方を高めるマネジメントである。

利用者・患者にとって本当に価値のあるサービスとは何か、地域にどのような役割を果たす組織でありたいのか。

その問いに向き合い、理念やビジョンを軸に組織運営を行うことが、結果として持続可能な経営につながる。

医療・介護経営は、制度対応型から価値創出型へと、明確な転換点を迎えている。

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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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