保険外へ~リハビリテーションはどこまで広がるのか~

保険制度に依存しない
リハビリテーションの広がり

日本のリハビリテーションは長らく公的保険制度を中心に発展してきた。

急性期・回復期・生活期という枠組みの中で、多くの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が役割を果たしてきたことは間違いない。

一方で、社会構造の変化や価値観の多様化により、保険制度だけでは対応しきれないニーズが顕在化している。

健康寿命の延伸、予防への関心の高まり、少子高齢化、労働環境の変化などを背景に、リハビリテーションは医療・介護の枠を超え、生活・仕事・教育・スポーツ・地域へと活動領域を拡張している。

もはや、リハビリテーションは、機能回復を目的とした医療行為に限定されるものではない。

全人間的復権という本来の理念に立ち返れば、活動の場が広がることは自然な流れである。

保険外領域で求められる
多様な専門性

保険制度の枠を超えた領域では、すでにさまざまな実践が始まっている。

高齢者の保健事業や介護予防、産業保健分野における健康管理や腰痛・転倒予防、ウィメンズヘルス領域での産前産後ケアや更年期支援、メディカルフィットネスにおける運動機能評価と疾病予防などは代表例である。

これに加え、近年注目されているのがジュニアアスリートの支援である。

成長期特有の身体特性を踏まえたコンディショニングや障害予防は、競技力向上だけでなく生涯スポーツの基盤づくりにもつながる分野である。

また、動物理学療法という新たな領域では、獣医療と連携しながら動物の運動機能改善や生活の質向上を支援する取り組みが始まっている。

さらに、パーソナルトレーナーとして個別性の高い運動支援を行う専門職、小児発達障害分野における発達支援や家族支援、精神科専門の訪問リハビリ・看護による地域生活支援など、対象とする人や目的は多岐にわたる。

これらはいずれも、従来の制度内リハビリでは十分にカバーできなかった領域である(図1)。


図1 多様なリハビリテーションの領域

価値を形にする
リハビリテーションの未来

保険外領域の広がりは、専門職の働き方を変えるだけでなく、リハビリテーションそのものの価値を再定義する動きでもある。

支援の形は対面サービスに限らず、オンライン指導、動画教材、コミュニティ運営、さらにはリハビリ関連プロダクトの開発へと広がっている。

評価ツール、運動補助具、在宅向けトレーニング機器など、現場の課題から生まれるプロダクトは大きな可能性を秘めている。

重要なのは、制度の有無ではなく、誰のどのような課題を解決するのかという視点である。

リハビリテーションは本来、人の生活を再構築するための知識と技術の集合体である。

その知見を社会にどう還元するかを考えたとき、保険制度の枠を超えた実践は必然的に生まれる。

これからの時代、リハビリ専門職には臨床力に加えて、課題設定力、発信力、連携力が求められる。

領域を超えて価値を創出することこそが、リハビリテーションの可能性をさらに広げる鍵となるのである。

キャリアデザインに関するセミナーはこちらから →セミナー一覧筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の現場経験とマネジメントの専門性を活かし、リハビリテーション部門や多職種連携に関するコンサルティングを全国で展開している。
在宅領域および整形外科リハビリテーションの臨床に長年取り組み、現場の実態を踏まえた実践的な視点を強みとする。
医療機関や介護事業所の立ち上げ支援、教育体制の構築、組織マネジメント支援など、実践的かつ現場に根ざした支援を得意とする。
また、コンサルティング先に加え、リハビリ職種養成校等でも臨床からマネジメントまで幅広く講義を行い、現場で再現できる形に落とし込んだ知見の提供に力を入れている。
セミナー講師としても多数登壇し、現場の課題解決につながる知見の共有を行っている。
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