集団リハビリテーションで成果が出る場をつくる~通所介護・通所リハの視点から~

はじめに

通所系サービスにおいて、リハビリ専門職は「人数が多い・時間がない」という現実と向き合いつつ、それでも生活機能の維持・改善というアウトカムを出し続けなければならない。

その解法の一つが集団リハビリテーションである。

集団は「人数をさばく代替案」ではなく、集団ならではの療法的因子を設計・評価すれば、個別を凌ぐ変化を起こしうる「場」になりうる。

本稿では、介護保険制度の流れ、集団の効き目、構造設計、評価、運営のコツまでを実務視点で整理する。

制度と現場の前提をそろえる

通所リハと通所介護は役割が重なりやすい。

だからこそ、地域と事業所で役割分担を発信・可視化しなければ、提案がケアマネ裁量に流されやすい。

近年の改定では、リハ・口腔・栄養の一体推進や卒業の明確化が打ち出され、通所介護にも自立支援型のアウトカム志向が求められている。

個別一辺倒から「集団×自立支援」へと重心を移す追い風である。

集団の効き目を理解する

Yalom の療法的因子を臨床に落とすと、集団は少なくとも次の効用をもたらす(図1)。

図1 集団の効果

・希望の醸成:同輩と進捗を共有することで「やれる感」が立ち上がる。
・普遍化と受容:「自分だけではない」「このままでよい」という安心感が生まれる。
・役割による自己尊重:誰かの役に立つ体験が自己効力感を押し上げる。
・同病者からの情報・模倣学習:セラピストの助言以上に刺さる瞬間がある。
・凝集性・共有体験:二者関係では得にくい親密さとスピードで行動変容が進む。

要は、「やってみよう」が自走し始める場をつくれれば、個別では届きにくいもう一歩が引き出せる。

構造を設計する

集団リハビリテーションにおいては「誰を、何の目的で、どんなやり方で」といった構造因子を先に決めることが重要となる。

・参加者数:少人数は深い関与だが負担感も増す。多人数は交流が薄まりサブグループが生じる。
・等質性:似すぎると葛藤が生まれにくい。適度な差が活性を生む。
・開放度:クローズドはプロセス把握と凝集性に有利。
・スタッフ構成:メイン+サブの2名が理想。
・表現・交流手段:言語(verbal)・動作(action)・作業(activity)を目的に応じて配合。
・場の価値と空間:場所そのものが処遇のメッセージになる。

設計の起点は目標である。

「課題志向(機能訓練)/集団志向(関わり・良い時間)/力動的(行動変容)」のどれを主眼に置くかで、対象・手段・評価が変わる。

評価は「プログラム」と
「個人」を分けて見る

プログラム評価では、前述の療法的因子(希望・受容・凝集性など)を観察・記録する。

個人評価では、参加率・参加意欲・所属意識・協調性・言語表現・対人交流・情緒の安定・役割行為などの行動指標で追う。

方法は観察/参加者の感想/検査の三本柱で、質的(場の特性)と量的(変化)を併用する。

ポイントは、「何が効いているのか」を後から語れる形で残すこと。

集団レベル(目標・雰囲気・凝集性など)と個人レベル(参加状態・行動特性)を、別レイヤーで記録する。

個別→半個別→目的別グループへ

生活期では、セルフリハ(利用者主体)の領域を増やすほど成果が持続する。個別で獲得した動作を、量を増やしつつグレードダウンして、半個別→目的別グループ→ホームワークへ移行させる(図2)。

図2 個別から集団へのプログラム移行例

このとき、どの生活動作に結びつけるかを最初から意識しておくことが重要となる。

運営のコツ

最低2名体制(メイン・サブ)で、声かけのタイミング・声量・合図(キューイング)を整理する。民間ジムのレッスン運営は参考になる。

さらに、身体機能・認知機能・パーソナリティ・生活歴をやりながら評価し、役割を渡していく。

役割は、自己尊重と凝集性を同時に高める装置である。

2本立ての介入で生活を前進させる

生活期は、心身機能へのアプローチ(個別練習、福祉用具、手順変更、介助統一)と、活動・参加へのアプローチ(環境調整、多職種連携、他サービス活用)を同時進行で回す。

場づくりの合言葉は「動き出す」「やりたくなる」「じっとしていられない」を引き起こす環境設計である。

これが「してもらうリハ」から「するリハ」への意識改革を生む。

まず一人、まず一枠から

「全ケースで一気に」ではなく、新規ケースから一人、ひと枠でよい。

見方(評価軸)を増やすほど設計は洗練され、卒業や移行を見据えた個別→集団→地域の動線が太くなる。

事業所としての社会的役割も強くなる。

まとめ

・制度は自立支援・卒業を促している。集団はその潮流と相性がよい。
・集団の効き目(希望・受容・役割・凝集性)を設計して引き出す。
・構造因子を目標起点で決め、場の価値を空間で伝える。
・プログラム評価×個人評価を分け、何が効いたか語れる記録にする。
・個別で作った芽を半個別→目的別グループ→ホームワークで参加へつなぐ。
・2名体制とキューイングで場を回し、役割で自己効力感と凝集性を高める。
・機能×参加の二刀流で、「するリハ」の場づくりにより生活を前に進める。

人数が多い・時間がないは、視点を変えれば集団だからこそ起きる学習と回復のチャンスである。

ぜひ日頃の臨床で、参加者の顔ぶれを思い浮かべながら、目標→構造→評価の順に小さく設計してほしい。

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投稿者
堀田一希


・理学療法士

理学療法士免許取得後、関西の整形外科リハビリテーションクリニックへ勤務し、その後介護分野でのリハビリテーションに興味を持ち、宮﨑県のデイサービスに転職。現在はデイサービスの管理者をしながら自治体との介護予防事業なども行っている。

「介護施設をアミューズメントパークにする」というビジョンを持って介護と地域の境界線を曖昧に、かつ、効果あるリハビリテーションをいかに楽しく、利用者が能動的に行っていただけるかを考えながら臨床を行っている。

また、転倒予防に関しても興味があり、私自身臨床において身体機能だけでなく、認知機能、精神機能についてもアプローチを行う必要が大いにあると考えている。
そのために他職種との連携を図りながら転倒のリスクを限りなく減らせるよう日々臨床に取り組んでいる。

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