訪問リハビリテーションの「診療未実施減算」とは、事業所に所属する医師が当該利用者の診療を行っていない状態で訪問リハビリテーションを提供した場合に適用される減算である。
減算単位数は50単位/回と定められている。
具体的には、訪問リハビリテーション事業所の医師が利用者を診療しておらず、別の医療機関の医師から提供された診療情報等を基に、事業所の医師や理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問リハビリテーション計画書を作成し、サービスを提供した場合に適用される。
ただし、すべてのケースで一律に減算されるわけではない。
医療機関に入院し、リハビリテーションを受けていた利用者が退院する際に、当該医療機関から十分な情報提供を受けている場合、退院後1か月以内に提供される訪問リハビリテーションについては診療未実施減算は適用されない。
これは、退院直後の在宅移行期におけるリハビリテーション提供を滞らせないための配慮である。
令和3年度介護報酬改定では、この診療未実施減算の減算幅が拡大された。
一方で、その後のデータを見ると、算定割合自体は年々減少傾向にあり、制度への対応や運用の変化が現場に浸透しつつあることがうかがえる。
診療未実施減算
の目的と意図
診療未実施減算は、単に「医師が診療していないから減算する」という形式的なルールではない。
この制度の本質は、訪問リハビリテーションにおける医師の診療関与を形骸化させない点にある。
訪問リハビリテーションは、医師の指示に基づく医療サービスであり、利用者の疾患や全身状態、リスク管理を踏まえた上で提供されることが前提となっている。
事業所所属の医師が診療を行い、その医学的判断を計画書やリハビリ内容に反映させることが、本来あるべき姿である。
しかし、現実には、在宅医療の主治医が別に存在するケースや、事業所所属医師の確保が困難な地域も多く、医師の診療関与が限定的になりやすい構造がある。
診療未実施減算は、こうした現実を踏まえつつも、「医師が診療しない状態が常態化すること」を制度として容認しないための調整措置である。
最終的な狙いは
「医療としての訪問リハビリ」を守ること
この減算制度の最終的な狙いは、訪問リハビリテーションを単なる訓練提供サービスにしないことである。
医師、療法士、他職種が情報を共有し、診療とリハビリテーションが循環する体制を維持することが求められている。
退院後1か月以内を減算対象外としている点や、一定の条件下ではサービス提供を認めている点からも分かるように、制度はリハビリ提供を抑制することを目的としていない。
あくまで、医師の診療関与を促し、訪問リハビリテーションの医療的質を担保することが目的である。
診療未実施減算は、現場に対して「医師の関与をどう確保するのか」「医療としての訪問リハビリをどう維持するのか」を問い続けるための制度的メッセージである。
今後の報酬改定においても、この視点がさらに強化されていく可能性は高く、事業所運営においては制度の意図を理解した上での体制整備が不可欠となるであろう。
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筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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