足部が十分な機能を発揮するためには、アーチ構造の保持だけでなく、荷重下において足底圧中心を適切に制御できることが重要となります。
前足部横アーチは、リスフラン関節における列間運動によって動的に調整される構造であり、この列間運動はアーチ形状の変化にとどまらず、足底圧中心を内外側へ導き、姿勢を安定して保持するための基盤として機能します。
そのため、リスフラン関節の可動性を評価することは、前足部横アーチの理解のみならず、足底圧中心制御という観点からも重要な意味を持ちます(図1)。
図1 リスフラン関節の運動軸と運動
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【リスフラン関節の構成と運動方向】
<第1列>
最も内側に位置し、足部の内側縦アーチの支持にも重要な役割を果たします。
足根骨側:内側楔状骨
中足骨側:第1中足骨基部
この列は可動性が大きく、足関節の背屈運動に伴って前足部レベルでは内がえし方向、底屈運動に伴って外がえし方向への運動が生じます。
これにより、歩行時に足部が地面の凹凸へ柔軟に適応することが可能となります。
<第2~4列>
足部の安定性と剛性を担う最も強固なエリアであり、前足部横アーチの頂点として、可動性を有する第1列および第5列に対する剛性の基盤として機能します。
足根骨側:中間楔状骨、外側楔状骨
中足骨側:第2・第3・第4中足骨基部
特に第2中足骨は内側楔状骨と外側楔状骨の間に深くはまり込み、靭帯によって強固に固定されています。
この構造により、この領域の可動性は極めて小さく、足部全体の安定した土台として機能します。
<第5列>
足部の外側に位置し、外側縦アーチに関与します。
足根骨側:立方骨
中足骨側:第5中足骨基部
立方骨と第5中足骨の連結も比較的強固ですが、第1列と同様に大きな可動性を有します。
ただし運動方向は第1列とは逆となり、足関節背屈運動に伴って外がえし方向、底屈運動に伴って内がえし方向への運動が生じます。
【リスフラン関節の特徴】
リスフラン関節の大きな特徴は、第1列と第5列が鏡像的ともいえる対照的な回旋運動を示す点にあります。
足関節の背屈運動に伴い、第1列は内がえし方向へ、第5列は外がえし方向へ運動することで、前足部は横方向への広がりと柔軟性を発揮します。
これは立位で身体重心を下げた際に足関節が背屈位となり、足底の接地面積が広がることに加え、前足部横アーチは一時的に低下しつつも支持性を保ったまま、土台としての安定性が高まることを意味します。
一方、足関節の底屈運動に伴っては、第1列は外がえし方向へ、第5列は内がえし方向へ運動し、第2中足骨を頂点とした強固な前足部横アーチが形成されます。
これは、つま先立ちなど足趾・前足部で荷重支持を行う場面において、足部が剛性の高い安定した土台として機能することを示しています。
【臨床上の着目点】
リスフラン関節の特徴は、第1列と第5列の対照的な運動にありますが、これらは単に足関節の背屈・底屈運動に付随する動きとして捉えるだけでは不十分です。
足関節背屈位での荷重支持において重要なのは、第1列および第5列が協調して足底圧中心を制御できているか、特に側方への移動および保持が可能であるかという点です。
第1列と第5列は、前足部横アーチを支持する構造単位であると同時に、足底圧中心を内外側へ導く機能的ユニットとして働きます。
これにより、身体重心が片側へ偏移するような状況においても、足部は支持基底面内で荷重を受け止め、姿勢を安定して保持することが可能となります。
このように、第1列と第5列が相互に協調して機能することで、足底圧中心の側方移動およびその保持が可能となり、立位や動作中においても足部は荷重支持基盤としての安定性を発揮します。
よって、リスフラン関節における第1列および第5列が、足底圧中心を側方へ移動・保持する機能を適切に発揮できているかを、それぞれの運動軸に沿った可動性と協調性の観点から評価することが重要です。
運動療法においては、単なる可動域拡大を目的とするのではなく、第1列・第5列が協調して足底圧中心を制御できる状態の再獲得を目指し、支持性と操作性を両立した前足部機能の再構築を図ることが求められます。
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投稿者
福山真樹

理学療法士
メディカルアナトミーイラストレーター
鳥取県理学療法士会イラスト担当
日本理学療法士協会推薦公式イラスト担当
京都芸術大学通信教育部イラストレーションコース非常勤講師(美術解剖学_添削採点担当)
イラストスタジオ福之画代表
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