在宅医療は大転換期へ:2026年度改定に備える医療機関の戦略思考

在宅医療は大転換期へ

2024年度改定以降、在宅医療を取り巻くルールは明確に変わり始めている。

在宅療養支援診療所(在支診)、在宅療養支援病院(在支病)、そして機能強化型は、これまで以上に質と体制の実効性が問われる仕組みに移行している。

特に機能強化型では、
高ニーズ患者の診療割合
看取り・緊急往診の実績
データ提出によるアウトカムの可視化

など、「何をどれだけ支えたか」を数値で証明することが求められるようになった(図1)。

さらに、在支病では管理栄養士の訪問栄養食事指導体制が施設基準に明記されるなど、医師と看護だけでは十分な品質を担保できないという国の認識が制度に反映され始めた点は重要である。

2026年度改定では、在宅医療の区分・評価体系が再編される可能性が高く、「在支診でとどまるのか、機能強化型を狙うのか、病院として在支病を取るのか」という経営判断が、今後の収益構造と地域ポジションを大きく左右する。

図1 2024年度診療報酬改定時の在支診・在支病・機能強化型の施設基準

多職種連携の重要性が高まる背景:栄養・口腔・リハ、そして薬剤師

これまで在宅医療は、医師と訪問看護を中心とした構造で評価されてきた。

しかし,近年、国は在宅で起きている現実的な問題であるフレイル、低栄養、口腔機能低下、活動量低下、そして多剤併用(ポリファーマシー)に対して、医師単独では管理しきれないことを強く認識している。

2024年度改定では、在支病を中心に「管理栄養士による訪問栄養食事指導体制」が基準に明記され、栄養の重要性が制度として位置づけられた。

歯科・口腔やリハビリに関する連携も急性期領域では評価され、在宅でも「多職種による総合支援が必要である」と総論で繰り返し示されている。

さらに2026年度改定に向けた2025年11月12日の第626回中医協総会の議論では、薬剤師が中心となるポリファーマシー対策が大きなテーマになっている。

高齢者の多剤併用は入院リスク・転倒・認知機能低下に直結するため、
薬剤師による服薬情報の一元管理
多職種による減薬カンファレンス
訪問薬剤管理指導の強化
などが議論されている。

これは、在宅医療における薬剤師の役割が「薬を準備する職種」から、「生活全体を俯瞰し薬物療法を最適化する専門職」へと移行していることを意味する。

同時に、訪問看護・訪問リハ・栄養ケア・薬剤管理という多職種による総合ケアが、在宅患者のアウトカムを左右することはエビデンスとして確立しつつある。

今後、制度は確実にこの方向へ加速すると見てよい。

院長・経営者が今すぐ決断すべき3つの戦略ポイント

1. 自院の目指す区分を明確化すること

  • 在支診のまま運用するのか

  • 連携型で24時間体制を共同構築するのか

  • 機能強化型に進むのか

  • 病院として在支病を取り、地域包括ケアの中核を担うのか

区分の選択は、医師体制・収益・業務負担・地域からの期待を大きく左右する。

経営判断として「どのポジションを取るのか」を早期に決める必要がある。

2. 高ニーズ患者のアウトカム管理体制を構築すること

機能強化型の要件で示されたように、

  • 緊急往診

  • 看取り

  • 在宅データ提出加算の届け出
    など、質を示すデータが不可欠となる。

2026年度改定では、これらがさらに制度的に整理される可能性があるため、今からデータ収集・分析の仕組みを整えることが望ましい。

3. 多職種連携を形ではなく仕組みとして埋め込むこと

  • 管理栄養士との連携(訪問栄養)

  • 歯科・口腔との定例的連携

  • リハ職との在宅機能評価・ADL向上プラン

  • 薬剤師との服薬情報共有・減薬カンファレンス

  • ICTによる情報プラットフォーム化

これらはすべて、今後の在宅医療を支える「構造」であり、制度が追いつく前に整備しておくことが、経営としての勝ち筋になる。

特に薬剤師連携は2026改定の主要論点であり、早めの協働体制構築が競争優位を生む。

在宅医療は「地域の生活をマネジメントする医療」へと進化する

在宅医療は、医師中心の時代から、
栄養・口腔・リハ・薬剤・生活支援を含む総合ケアモデル
へと移行する過程にある。

2026年度改定は、この方向性をさらに強化する節目となり、院長・経営者の意思決定が、地域での役割と収益構造を左右する。

制度に流される側になるのか、制度を活用して地域で圧倒的価値を発揮する側になるのか。

その分岐は、今の準備にかかっている。

診療報酬改定に関して理解を深めたい方はこちらから → 記事を読む

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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