リハビリ部門の現状維持の目的化は大きなリスクである

リハビリ部門において、日々の業務を安定的に遂行することは重要である。

しかし、いつの間にか 現状維持そのものが目標となってしまう現象 が多くの施設で起きている。

これは表面上は安定しているように見えて、実は大きな問題を内包している。

なぜ現状維持が危険なのか。それは、現状維持は「改善しない」という意味ではなく、実際には徐々に劣化している 可能性が高いからである。

制度改定、人材市場の変化、他職種からの期待の変化など、外部環境は常に揺れ動いている。

外部環境が変わる中で内部だけが同じ状態を続けようとすると、それは維持ではなく「相対的な後退」である。

管理職の役割は、部署を安定稼働させるだけでは不十分である。

むしろ、ただ回しているだけの状態は 現状維持にすらなっていない と言える。

実績の低下、スタッフの疲弊、事務部門や医師からの評価の低下などは、静かに進行する。

管理職が気づいたときには、組織の競争力は大きく落ちていることが多い。

特にリハビリ部門は、人材と知識・技術を価値の源泉とする部門であるため、改善を止めた瞬間に劣化が始まる。

新人育成の形骸化、カンファレンスの形式化、職種間連携の弱体化、アウトカムの低下など、悪化はゆっくりと、しかし確実に起こる。

だからこそ、管理職は現状維持ではなく「変化への適応」を仕事の中心に置くべきである

改善とは大きな改革を意味するものではない。毎週の小さなカイゼン、コミュニケーションの工夫、教育の仕組みづくり、業務の再定義など、小さな変化の積み重ねが組織力をつくる。

その歩みを止めた瞬間に、組織は競争力を失い始める。

リハビリ部門の管理職には、安定という幻想にとどまるのではなく、現状維持の目的化がもたらす危険性を直視し、変化をマネジメントする覚悟 が求められるのである。

筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授

医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
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