運動器疾患の臨床において、受傷機転の分析は極めて重要である。
受傷機転とは、どのような力学的負荷が骨、関節、軟部組織に作用し、損傷へと至ったのかを読み解く作業である。
この理解が曖昧なまま治療に入ると、痛みの真因にアプローチできず、再受傷のリスクも高まる。
逆に、受傷機転を的確に把握できれば、負担が集中した部位や不良動作を特定し、機能改善へ直結する介入が可能となる。
例えば、膝OAの内側痛を呈する患者では、膝の内反位が受傷機転(疼痛誘発肢位)として関与しているケースが多い(図1)。
立位や歩行時に大腿の外旋と脛骨の内旋が組み合わさり、膝の内側コンパートメントに圧縮ストレスが集中することで疼痛が生じやすくなる。
また、股関節外転筋群の弱化により骨盤が遊脚側に下方傾斜し、より膝が内側へ押し込まれるようなモーメントが生じる場合も多い。
図1 受傷機転(疼痛誘発肢位)の異常アライメント
(膝OA患者では膝内反の制御が重要となる)
これらのアライメント異常を理解した上で、立ち上がり動作や階段昇降時の膝軸を正しく誘導していくことが再発予防には不可欠である。
さらに、受傷機転の分析は患者教育にも有効である。
患者が「なぜ痛めたのか」を理解できると、行動変容が促され、自主トレーニングの重要性にも納得が生まれる。
治療者が抽象的な説明に留めるのではなく、具体的な異常動作、負荷の方向、筋力が低下した筋の影響などを示すことで、より主体的なリハビリへとつながる。
再受傷を防止するためには、受傷機転となった動作を安全に遂行できる状態をつくる必要がある。
すなわち、関節アライメントの修正と、それを保持するための筋機能の再学習である。
評価・治療・再獲得のサイクルを丁寧に繰り返すことが、長期的な改善に直結する。
受傷機転の分析は単なる原因探しではなく、確実な予防と機能再建のための基盤である。

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略と人材育成に精通し、年間100回以上の講演・研修を行っている。
病院・介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と現場力の向上をサポートしている。
著書には「リハビリ職種のキャリア・デザイン」「リハビリ職種のマネジメント」に加え、
『外来リハ・通所リハ・通所介護のリハビリテーション(運動器疾患編/組織マネジメントと高齢者リハビリ編)』
『リハビリテーション職種の在宅リハビリ・ケア』
などがある。
理学療法士として、呼吸リハビリテーションおよび運動器リハビリテーションを専門とし、
臨床・教育・マネジメントを横断した実践的な知識と技術を提供している。
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