パルスオキシメータの数値が高ければ本当に問題ない?

パルスオキシメータは、みなさんの施設でも使用される頻度は多いのではないだろうか。

私は新人の時に「息切れ=パルス」といった感じで、とにかく患者さまの人差し指につけて数値を熱心に確認した思い出がある。

パルスオキシメータは、経皮的(採血などの侵襲なし)に動脈血にあるヘモグロビンがどの程度酸素と結合しているかを数値化できる機械であり、一言でいうと酸素化を計測するものと考えてよい。

では、パルスオキシメータの数値は高ければ問題はないのか。

この点を考えていきたい。

本来、動脈より採血して動脈血酸素(PaO2)の結果から酸素化を確認するが、侵襲があり手間も要するため、経皮的かつ容易に測定できる経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の数値から PaO2を予測できるパルスオキシメータが臨床ではよく使用されている。

二つの数値の関係性は解離曲線が有名であるがSpO2から PaO2の予測と体の中の状態が大まかに把握できる(図1)。

図1 SpO2とPaO2の値の関係性


酸素化を回転ずしで考える

実際に呼吸で取り込んだ酸素は、肺胞から動脈血へ取り込まれ、血液中のヘモグロビンと結合した酸素分子が身体の各臓器に行き渡ることで酸素の提供を行っている。

この流れをイメージしやすいように回転ずしで表現してみたい(図2)。

図2 正常な酸素化の流れ

レーンの上(血液)では、お皿(ヘモグロビン)が流れている。お皿の上にお寿司(酸素分子)が乗っており、これを乗せているのが寿司職人(肺)である。

お皿の上にのったお寿司を食べているのが、色々な客(各臓器)である。

客のお腹が減らないように、寿司職人は空いているお皿の上にどんどんお寿司を乗せていく。

このように需要と供給のバランスが取れている状態を、酸素化がよい状態と考えることができる。

ここで注意していただきたいのは、SpO2は動脈血で確認するものであるため、レーン全体ではなく、職人(肺)から客(臓器)に流れるまでのレーン(動脈血)における「皿にのっているお寿司の割合(飽和度)を見ているという点である。

仮に100皿流れていて、お寿司が乗っているお皿が 98 個であれば、98%ということである。


SpO2が低下する場合

では、同じように回転ずしでイメージしながら、SpO2が低下するときに何が起きているかを考える。

寿司職人(肺)が働けなくなると、お皿(ヘモグロビン)にお寿司(酸素)を乗せる役割を担う人がいなくなる(図3)。

図3 酸素化異常(肺の障害)が起きている場合

この場合、客(臓器)はお腹が減った状態となる。

職人から客までのレーン(動脈血)では空皿が目立つようになり、結果として SpO₂ は低下する。

ただし、臨床で SpO2が下がる背景には、主に4つの機序があることを押さえておくべきである。

回転寿司の比喩に寄せて説明すると、次のとおりである。

肺胞低換気(低換気)
レーン全体の動きが故障などで動きが悪く(換気量が足りず)、職人が使えるネタ(酸素)が不足している状況である。

職人の力量が落ちたわけではないが、レーンの動きが悪い(そもそも空気が入ってこない)ため寿司が十分に乗らず、空皿が増える。

臨床では鎮静・オピオイド、神経筋疾患、呼吸筋疲労などでみられる。

少量の酸素追加でSpO2が上がりやすいことが手掛かりとなる。

換気血流不均衡(V/Qミスマッチ)
V/Qとは肺胞換気量(V̇A:肺胞に実際に到達しガス交換に関与する換気)と、肺血流量(Q̇:肺毛細血管を流れる血流)の比である。
すなわち、どれだけ「空気」が届き、どれだけ「血液」が流れているかのマッチング指標である。

レーンの区画ごとにムラが生じ、ある区画では職人が寿司をよく乗せるが、別の区画ではうまく乗らない、といった偏りが起きている。

結果として全体では空皿が増えやすい。

微小無気肺、気道分泌、COPD・喘息増悪、肺炎初期などで起こる。

酸素投与に反応してSpO2は上がりやすい

体位や排痰で区画の通りが良くなると改善しやすいことが特徴である。

拡散障害
職人とレーンの間に薄い仕切り(膜)ができてしまい、寿司を皿に乗せにくい状況である。

職人は働いているが、膜が邪魔をして乗るまでに時間がかかる。レーンが早く回る(運動時)と、寿司が乗り切らず空皿が目立ち、SpO2が落ちやすい。

間質性肺疾患や線維化でみられ、運動で低下が顕在化しやすい一方、酸素投与には反応しやすい。

シャント
レーンの一部が職人の前を通らずに客席へ近道してしまう状態である。どれだけネタを補充しても、その近道を通る皿には寿司が乗らないため、高濃度酸素でもSpO2が上がりにくい

重症肺炎や広範無気肺、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、などが該当する。

体位変換での反応が乏しく、呼吸仕事量が大きくなりやすい。

以上のとおり、同じ「空皿が増えてSpO2が下がる」でも、原因(レーンの不良/区画のムラ/膜の厚み/近道の存在)は異なる。

臨床では、①酸素投与で上がるか(上がる=V/Q・拡散、上がりにくい=シャント)、②体位や運動でどう変わるか(運動で落ちやすい=拡散、体位で揺れる=V/Q)、③呼吸パターン・薬剤歴・神経筋所見(低換気示唆)を系統的に確認し、必要に応じて動脈血液ガス(ABG)から得られる PaO2・PaCO2を用いて肺胞–動脈酸素較差(A–aDO2)を算出し、そのA–aDO2の大きさPaCO2の方向(高い/低い)を同時に解釈して、低酸素血症の機序を切り分けることが重要である。


SpO2が高ければ問題はないのか

最後に SpO2がよければ、各臓器への酸素供給に問題はないのかを考えてみたい(図4)。

図4 酸素化異常(循環の障害)が起きている場合

寿司職人は元気にお寿司をお皿に乗せている。

そのため、職人から客までのレーン(動脈血)では空皿がない状態(SpO2は良好)である。

しかし、レーンの流れる早さを観察すると、とてもゆっくり流れている。

この場合、いくら空皿がない状態でも客のお腹は満たされない。

つまり、心疾患などで循環状態に問題がある患者はSpO2が正常でも息苦しさを訴える可能性がある。

さらにもう一つのケースが考えられる(図5)。

図5 酸素化異常(Hb濃度の問題)

寿司職人は元気にお寿司をお皿に乗せている(SpO2は良好)。

レーンの流れの早さにも問題はない。

しかし、レーンに流れるお皿の数そのものがとても少ない。

この場合も客のお腹は満たされない。つまり、SpO2が良好であっても臓器への酸素供給が不十分となるケースがあり、これは重度の貧血の患者に該当する


まとめ

今回は SpO2について、回転ずしを用いてイメージしやすくまとめた。多少強引な例えもあったが、酸素化についての理解が深まったのではないだろうか。

初級編としてごく大まかなケースを示したが、酸素化が悪化する要因は他にも多岐にわたる。

取っ掛かりとしてイメージを持っていただければ幸いである。

私自身、パルスオキシメータを否定するつもりは全くなく、この数値が臨床的に非常に有意義であることは間違いない。

ただし、結果を鵜呑みにしすぎると大切なイベントを見逃す可能性があることを理解していただきたい。

投稿者
堀田一希

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・理学療法士

理学療法士免許取得後、関西の整形外科リハビリテーションクリニックへ勤務し、その後介護分野でのリハビリテーションに興味を持ち、宮﨑県のデイサービスに転職。現在はデイサービスの管理者をしながら自治体との介護予防事業なども行っている。

「介護施設をアミューズメントパークにする」というビジョンを持って介護と地域の境界線を曖昧に、かつ、効果あるリハビリテーションをいかに楽しく、利用者が能動的に行っていただけるかを考えながら臨床を行っている。

また、転倒予防に関しても興味があり、私自身臨床において身体機能だけでなく、認知機能、精神機能についてもアプローチを行う必要が大いにあると考えている。
そのために他職種との連携を図りながら転倒のリスクを限りなく減らせるよう日々臨床に取り組んでいる。

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