理学療法士・作業療法士・言語聴覚士としてのキャリアを歩む過程において、多くの専門職は「どのように自分の道を切り拓くか」という課題に直面する。
資格を取得した直後は臨床技術の習得や現場適応が最優先であるが、数年が経つと「自分はこの仕事を通じて何を成し遂げたいのか」「どのような分野に専門性を高めたいのか」といった問いに向き合わざるを得なくなる。
これは単なる昇進や転職の問題ではなく、職業人としての人生設計に直結するテーマである。
そのために必要なのは、外部から与えられる評価や制度に依存するのではなく、自らのキャリアを能動的にデザインする姿勢である。
キャリアデザインとは偶然の積み重ねに任せるのではなく、自分の価値観や強みを明確にし、進むべき方向性を自ら描く営みである。
ここで重要となるのが、自分の過去を振り返るという作業である。
新人時代にどのような壁に直面し、どのように乗り越えてきたのか。
どんな場面でやりがいを感じ、逆に何にストレスを抱いてきたのか。
その経験を丁寧に掘り下げることで、自分が大切にしてきた価値観が浮かび上がる。
それは「患者の生活に寄り添う姿勢」であったり、「チームをまとめる力」であったり、あるいは「専門技術を極める探究心」であるかもしれない。
過去の自分を省みることは、未来を選択する羅針盤を手に入れることと同義である。
そして、見出した価値観を基盤にすれば、今後のキャリアはより一貫性をもって進めることができる。
臨床スキルの深化、管理職としての挑戦、教育や研究への道、多職種連携や地域貢献、さらには起業という選択肢まで、自分の価値観に合致する進路を主体的に選び取れるのである。
キャリアは待っていれば訪れるものではない。
自分自身を振り返り、価値観を明確にし、未来を描く意志があってこそ形成される。
過去の経験を無駄にせず、自己理解を深めることが、PT・OT・STとして持続的に成長し続けるための基盤となるのである。
筆者
高木綾一

理学療法士
認定理学療法士(管理・運営)
三学会合同呼吸療法認定士
修士(学術/MA)(経営管理学/MBA)
国家資格キャリアコンサルタント
株式会社Work Shift代表取締役
関西医療大学 保健医療学部 客員准教授
医療・介護分野の経営戦略や人材育成に精通し、年間100回以上の講演を実施。
医療機関や介護事業所の経営支援を通じて、組織の成長と発展をサポートする。
著書には 「リハビリ職種のキャリア・デザイン」 や 「リハビリ職種のマネジメント」 があり、リハビリ職種のキャリア形成やマネジメントの実践的な知識を提供している。
経営相談・セミナー依頼はお気軽にお問い合わせください。
